農業分野の再生可能エネルギーとして国内でも普及の進むバイオガスプラント。そのプラントで電力と共に生み出される有機肥料の「消化液」は、従来型の堆肥に比べて、「即効性が期待できる」「扱いやすい」といった多くのメリットがあります。
液状の有機肥料である「消化液」は、畜産系・農業系のバイオマスを原料するバイオガスプランで生産されます。
私たち十勝耕畜クラスターでは、グループの経営する酪農牧場のバイオマスを原料に、バイオガスプラントで「消化液」を生産し、地域の農家に提供しています。2017年春には、十勝管内清水町のバイオガスプラント「御影バイオガス発電所」を稼働。今後、グループが開設する酪農牧場は、バイオガスプラント併設型とする計画です。
従来型の堆肥を比較すると、バイオガスプラントで生産される「消化液」には、多くのメリットがあります。
バイオガスプラントでは、発酵槽と呼ばれる密閉空間でバイオマスを分解、発酵させます。その過程で、搬入されたバイオマスで高い比率を占めている家畜ふん尿などに含まれる「有機態窒素」が、「アンモニア性窒素」が変化します。肥料成分の「アンモニア性窒素」には、高い即効性があります。
窒素全量[T-N](%) | 0.33 |
---|---|
りん酸[T-P2O5](%) | 0.14 |
加里[T-K2O](%) | 0.25 |
炭素[O-C](%) | 1.4 |
炭素窒素比[C/N] | 4.2 |
水分(%) | 95.4 |
従来、堆肥の難点は、家畜ふん尿に飼料の牧草などに含まれる雑草の種子が残存し、畑に雑草がはびこること。その点、「消化液」は、雑草の心配はありません。バイオガスプラントで「消化液」が生産される処理過程で、雑草の種子が死滅することがわかっています。
従来の堆肥は、その大きな難点が、その強い臭気にありました。その点、「消化液」は、その処理過程で臭気の原因物質が大幅に減少していることから、臭気が大幅に低減。好天時の散布であれば、翌日には、臭気は感じられなくなります。
バイオマスに含まれる大腸菌、サルモネラといった病原菌は、「消化液」を生産する処理過程でほとんどが死滅。その一方で、作物の病害抑制効果がある有用菌のバシラスは一定量が残存することが分かっています。
土壌の団粒化は、「消化液」の最大のメリットです。これは、その成分に「アンモニア性窒素」が豊富に含まれていることも関係しています。土壌の微生物の活動が活発化することで、団粒化が促進され、土中に空気が入り込みやすくなり、水はけも良くなります。
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「消化液」共同研究報告レポート〈上〉
「消化液」共同研究報告レポート〈下〉
栽培する作物や土壌の状態に応じて、「消化液」の効果的な散布を検討します。一般には、「春の散布」は4~5月、「秋の散布」は8~10月となっています。
従来、化学肥料を使っていた場合、「消化液」を活用することで、化学肥料に置き換えることができるので、確実に減肥効果が期待できます。
作物 | 散布量t/10a | 散布時期 | ||||||
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4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||
小麦後緑肥 | 3.0~ | |||||||
小麦播種 | 2.6~ | |||||||
ビート | 4.0~ | |||||||
ばれいしょ | 4.0~ | |||||||
小豆 | 4.0~ | |||||||
デントコーン | 10.0~ |