減点は最小限に
北海道は桜が咲き始めました。農家さんへの道すがら、つい目が行きますね。桜は少しの間しか楽しめないからこそ、心奪われるのでしょうね。
さて、今日は大変基本的なことではあるのですが、私が移植師として心がけていることを少し文章にしてみました。
それは、授精師は牛を妊娠させることにおいて“加点”が難しいということです。
私は、牛は妊娠(受胎)能力を最初から100%持っている状態と考えております。
これは、その牛が親牛の胎内にいるときから、生まれて成長し妊娠適齢期になるまで、気温や湿度、栄養状態などが隅から隅まで完璧であった場合に100%であると考えています。
もちろんそんなことはありえないわけであり、エサが不十分で栄養状態が悪くなることもあれば、他の牛にいじめられたり、暑熱でバテたりとストレスがかかる場面は無数に存在し、そのたびに妊娠能力は下がっていきます。
そして、それは採精及び精液の処理、授精業務も同じことが言えます。どれだけ牛が完璧な状態であろうとも、授精・移植業務の際にミスがあればどんどん減点されていきます。
例を挙げると、精液・受精卵性状、精液・受精卵の凍結方法、凍結精液・凍結受精卵の保管状態、融解方法、授精器具・手の消毒、授精器具の取り扱い(もっといえば授精器具の製造工程も)、授精対象牛へのアプローチ方法(近づく際にストレスをかけない)、外陰部の消毒、膣内・子宮内での器具の操作など、これらで間違った手技があれば減点されていくと考えています。
だからこそ、私は少なくとも授精業務においては徹底的にミスを減らすことを心がけています。私は100を0にすることはできても、0を100にすることはできず、50を51にすることもできません。
ただ、私が思う一流の授精師は加点ができると思います。牛をよく観察して、乳検や血液検査結果、飼料分析結果や採食量などの様々なデータを駆使し、畜主と相談の上で、飼料添加物を足せばよいのか、子宮洗浄をすればよいのかなどを案内し、受胎可能性を高める。そしてミスを最小限に授精・移植に臨む。
私はまだまだ一流には程遠い人間ですが、一流を目指し精進していこうと思っております。
つらつらと当たり前のことを書きましたが、自分への戒めとしてコラムにさせていただきました。
ここまで目を通していただきありがとうございました。
外谷