同期化処理紹介(E2CIDRsync+PMSG)
北海道も少しずつ夏らしくなってきましたね。搾乳牛は暑熱によるダメージが出てくる時期です。農家の皆さんも熱中症にお気を付けください。
今回はとあるホルモンプログラムを当グループで試験的に使用したときの結果をお話します。
ECSにPMSG(eCG)というホルモン剤を足した方法です。
全農ET研究所さんがブログでPMSGを取り上げてくれていたことが試験実施のきっかけになります。そちらに元になった論文とPMSGのメカニズムを載せてくれています。
Google検索で、「全農」「eCG」で調べるとページ出てきます。リンク貼っていいか分からないので、お手数ですがこの方法でお調べください(;・∀・)
ECSとは
同期化処理としてのシダーシンクの処置開始時に、E2製剤を用いる方法のことを私はこう呼んでいます。名付けたわけでは無く、とある獣医さんの論文でこの呼び名が使われていたので引用しました。また、シダーシンク自体の説明は割愛します。
添付画像ですと、PG投与による黄体退行後の主席卵胞の排卵にもE2製剤を使用していますが、これは単純にE2製剤がGnRH製剤と比べて安価であることと、私の場合はETしかしないので、排卵タイミングが厳密である必要がないためです。
定時AIに用いる場合は、排卵タイミングを正確にするためにGnRH製剤をオススメします。この場合のAIは投与24時間後です。
PMSG(eCG)とは
血清性腺刺激ホルモンのことです。ウマ血清由来の糖タンパクで、卵胞刺激ホルモン(FSH)様作用があります。卵胞機能およびサイズを増大させることで、その後にできる黄体発育を促進します。成分はウシ由来ではないので、反復投与すると抗ホルモン抗体が産生されて効果が減少する可能性がありますのでご注意を。
投与・無投与の受胎率差
当グループの酪農牧場においてECSにPMSGを使用して定時授精を行った結果が次の通りです。
条件は以下の通りです。
- ECS(シダー留置9日間で排卵にはGnRH使用)にPMSGを500IUで使用
- ホルスタイン経産牛
- 黒毛和種精液
- 連注無し
- 2021/4/5~6/30までの約3か月間で実施
無投与より投与した方が受胎率が高くなりました。
有意差などは出しておりません。
多胎産子率
PMSGの過剰排卵作用による多胎産子率は以下の通りです。
投与・無投与ともに12%ほどの多胎率でした。
ホルスタインの場合、自然発情での人工授精の多胎率は2-5%ほどと言われていますが、ホルモンを使用した場合にはおそらくこの程度になるのだと思います。と考えると、この実験では500IUでのPMSG投与で多胎率は上昇しなかったと言えます。
ただ、PMSG投与の場合は三つ子が出ています。
まとめ
PMSG投与によって受胎率の上昇が見られましたが、有意差などを出していないのでいまいち信憑性に欠けるかと思います。
また、元論文からはPMSGは低BCS、暑熱ストレス、分娩後早期、無発情などネガティブファクターがある場合に有効とあるので、使用するならそういった牛がふさわしいかと思います。
ご参考になれば幸いです。