CCL(嚢種様黄体)は移植すべきか?-②CL・CCL受胎率比較編-
明日2/13は最高気温が5℃を超えるそうです。十勝の陽当たりの良い畑はすでにかなり雪が解けてきていて、春の訪れを感じますね。
では、前回の続きです。
前回のコラムはこちら↓
前回コラムでは、CLの方が受胎率に優れるというデータが出ました。
今回はCL・CCLの直径と受胎率に関してです。
月毎のCL・CCLの構成比
前回コラムではCLの方が受胎率に優れる、という結果になりましたが、まずは季節的な影響が無いかを調べるために、月ごとのCLとCCLの発生割合を調べてみました。
図①:月ごとのCL・CCL構成比(2023年)
※10月、11月は受胎結果が出ていない牛を一部除外しているので参考まで。
2023年1~3月まではCL割合が90%を超えています。4月以降にCCL割合が増え、7月にはCCL割合が20%、8月には25%まで上昇しています。9月以降にはCCL割合が下がる傾向にあります。
暑熱ストレスによる採食量の低下や不快指数の上昇がCCL形成率を上げる傾向があるかもしれません。
この辺りは文献を漁ってみましたが、特に調査している方がいませんでした。
月毎の受胎率
次に月ごとの受胎率です。
CL・CCL合わせたもの、CLのみ、CCLのみの3パターンを調べました。
2023年の暑熱期に当たる7~9月を黄色くマーキングしてあります。
図②:月毎の受胎率(CL・CCL一緒)
7月は北海道はまだ涼しいので、受胎率はそこまで落ちません。
しかし2023年の8月は猛暑が続いたので、明確に受胎率が落ちています。
図③:月毎の受胎率(CLのみ)
CLのみを検証した結果です。8月にはやはり悪くなりますが、回復も早く9月には元の水準に戻りつつあります。
図④:月毎の受胎率(CCLのみ)
構成比の部分で説明した通り、暑熱期からCCL頭数が増え、8月以降は受胎率は芳しくありません。
9月になっても回復していないのがCLとの大きな違いでしょうか。
ここまでの結論は以下の通りです。
・暑熱期にCCL発生頭数は微増する
・暑熱期のCCLの受胎率低下の幅はCLよりも大きい
CL直径の分布と受胎率との相関
次に、CL直径と受胎率との関係性を調べてみました。
よく大きなCLの方が受胎率が良いと言われますが、CCLにも当てはまるのかを検証しました。
CL直径を0.5cmごとに区分して比較してみました。
まずは全て合わせた成績です。
図⑤:CL直径と受胎率(CL・CCL一緒)
グラフ①:CL直径と受胎率(CL・CCL一緒)
受胎率は1.9cm以下の黄体で悪く、3cm以上の大きな黄体が良いという結果になりました。
個人的には2cm以上であれば受胎率に差は無いだろうと思っていたので、この結果は少し驚きでした。
健康で肝機能が良くないと糖新生が上手くできず、黄体形成の元となる糖が不足してしまいますので、必然的に大きな黄体はできづらい、転じて黄体が小さい牛は肝機能が良くないという図式が当てはまるかと思います。
次にCLのみのデータです。
図⑥:CL直径と受胎率(CLのみ)
グラフ②:CL直径と受胎率(CLのみ)
次にCCLのみのデータです。
図⑦:CL直径と受胎率(CCLのみ)
グラフ③:CL直径と受胎率(CCLのみ)
大変興味深い結果となりました。
CCLにおいては2.9cm以下だと芳しくない成績ですが、3.0cm以上だとCCLに少し劣るくらい、更に3.5cm以上だとCLと同等の受胎率となりました。
水分量の多いCCLは膨張しているので必然的に直径が大きくなります。エコー上は判別しづらいですが、仮に水分が抜けた場合の実質の黄体組織面積は良質なCLと同等なので、同等の受胎率になるのではと思います。
面積の計測もしていればこの辺りの真実が分かるんですが、残念ながらデータ収集をしてなかったのでここまでとなります。
今回は黄体直径に着目してデータを出してみました。
次回は水分量に焦点を当ててみようと思います。
毎月更新継続中…。
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