ノベルズ製OPU-IVP和牛凍結胚の受胎率
北海道十勝は先週に最後の雪が降り(最後だと思いたいですね)、あとは暖かくなるだけといった感じですね。
移動中、橋の上から釣り人を見かける度に、YTガンを放り出して釣り竿を握りたくなる衝動に駆られます。
早起きできれば仕事前に少しできるんですが、いかんせん朝に弱いので行けません。
さて、CCL研究の続きで内腔水分量に関する話を書こうと思ってたんですが、少しデータ数が足りないのと、カラードップラ機能付きエコーを導入したので、そちらを使って黄体血流のデータを集めてから再度まとめようと思います。
今回は受胎率不安から販売先と販売数を絞っていた弊社の凍結胚に関して、ある程度受胎結果が出たのでそのお話になります。
ノベルズ製OPU-IVP和牛凍結胚
ノベルズで飼養されている繁殖雌牛から卵子吸引を行い、体外授精後に7日間培養して作出された体外胚を緩慢凍結法で凍結したものになります。
移植条件
期間:(移植時期として)2022年1月~2024年3月まで
レシピエント:乳用・ホルスタイン種115頭。ほとんどが分娩後初回もしくは2回目の授精(移植)。
移植者:ノベルズブリーディングサービス外谷
移植手法:YTガンを使用し、発情日を0日として7日目、8日目、9日目のいずれかに移植。融解は7秒~10秒の空中保持後に30℃の温湯に30秒間浸漬しました。
受胎率の算定方法:再妊娠鑑定(発情日から数えて50~60日)で受胎したものを「受胎」と表しました。
※①結果に関して、妊娠鑑定未実施の牛はデータから除外しました。
年次別受胎率
移植頭数が少なく偏ったデータが出ている部分もあるのでご注意ください。
全体結果、115頭移植して再妊娠鑑定を+で通過した牛が49頭の受胎率42.6%でした。
表①2022年~2024年の年次別成績
2022年は振るわない成績でしたが年々向上しています。2024年が今のところ好成績ですが、頭数が少ないので参考まで。
成績向上の理由は、Day8レシピエントとの相性が悪いことが判明したことと、結果を受けて移植をDay7レシピエントに集中させたことが大部分です。詳細は後述します。
その他、これが良かったんじゃないかということは以下の通り。
①培養液の工夫
②Day7発生確認から凍結作業までの時間の短縮
③タンクへの液体窒素のマメな補充
④移植前の融解環境の整備(風の無い、空気の対流が最小限の空間で行う)
次から細かい項目ごとに受胎率を見ていきます。
月毎の受胎率
凍結卵移植を始めた2022年12月から2024年3月までの月ごとの成績をまとめたものが以下の通りです。
表②2022年12月~2024年3月までの月毎成績
新鮮胚が足りない時に補助的に使っていたので頭数が少なく、あまり参考になりませんが載せておきます。
頭数は少ないですが、2024年からはやむをえない場合以外はDay7レシピエントに移植するようにしています。
産次数別受胎率
表③:2022年~2024年の産次数別成績
全体的に同様の成績で、不自然な項目は見られませんでした。
レシピエントDay別受胎率
表④:レシピエントDay別成績
Day7移植した場合とDay8移植した場合とで10%も受胎率が違ってきます。
参考までに、弊社新鮮胚のDay別成績と、弊社外のOPU-IVP和牛凍結胚のDay別成績を載せておきます。
表⑤新鮮胚Day別成績
弊社新鮮胚を移植した場合のDay6~Day9までの受胎成績になります。
Day7とDay8とでほぼ差が無いことが分かります。
表⑥他社製造のOPU-IVP和牛凍結胚のDay別成績
他社が製造した凍結胚を私が移植した場合のDay別成績です。全て同一獣医師が製造したものになります。
受胎率差は5%とノベルズ製造の凍結胚と比較して幅は小さいですが、こちらもDay7レシピエントの方が受胎率が良いという成績になっています。
結論
弊社OPU-IVP凍結胚をホルスタインへ移植した場合の受胎率はレシピエントがDay7において優れるという結果になりました。
なぜDay7の方が良いのか、までは分かっていません。予想がつく方がいたら教えてほしいです。
今後は凍結胚をどんどん販売していく予定ですが、ご使用の際の参考にしていただけますと幸いです。
ただ、飼養環境などでいくらでも結果は変わると思いますので、あくまで参考程度にお願いします。
OPU-IVP凍結胚をホルスタインに移植して42%の受胎率というのは普通の成績ではないでしょうか。
個人的な評価としては、飼養管理が素直に受胎率に出る商品になったと思っています。
4月中には凍結卵販売ページを整えますので、ぜひそちらからお買い求めください。
ノベルズブリーディングサービス外谷