計算は大事ですね-代用乳の濃度、合ってますか?-
5月ですがもう暑くなってきましたね。
本日5月23日は十勝も最高気温27℃と、ホルスタインの好適温度を超えています。
すでに牛舎の扇風機がフル稼働している所も多いのではないでしょうか。
これからの季節は暑熱ストレスに加えて、サイレージのカビなどにも一層注意しなければいけませんね。
さて、ここのところ顧客農場の和牛子牛において同様の問題が見られたのでコラムにしようと思いました。
結論からいうと、代用乳の濃度が薄かったってだけの話です。
計量と計算は大事です。
皆さんは代用乳を使ってミルクの調整をする際に、粉の量はきちんと計っていますか?
いちいち計るのが面倒なので、計量カップだったり何かしらの入れ物で最初に計った量を覚えておいてそれを使い続ける、というやり方が多いのではないでしょうか。
もちろんこのやり方を否定しているわけではありません。毎度計っていたらいくら時間があっても哺乳が終わりませんね。
しかし、最初に計った量が合っていたとしても、
途中で代用乳の製品自体を変えたり、
計量カップを紛失して、とりあえずありあわせのものを使っていたらそれが定着しちゃったり、
そもそも最初に計り間違えていたり、
計ることに意義を感じられずにおざなりになっていったり、
などと量が狂っていく可能性はいくらでもあります。
今回2件の農家さん(いずれも酪農家です)で、それぞれに和牛子牛が大きくならない、たくさん飲んでいるはずなのにミルクをもっと欲しがるという事例があり、調べたところ代用乳の濃度が薄いということが発覚したので紹介します。
A農場さんの場合
A農場さんの和牛子牛は朝晩それぞれ4リットルのミルクをあげているんですが、飲み終わっても足りなくてひたすら欲しがるという状況でした。子牛ならそんなもん、と見落としてしまうかもしれません。
ミルクの給与は、1回400gの代用乳を4リットルのお湯で溶かして朝晩与えていました。
400g/(400g+4000ml:全体量)=0.09なので9%の濃度のミルクでした。薄い!
これは言葉で表現すれば「10倍のお湯で溶かしている」、という感じです。
ほとんどの代用乳製品は7倍希釈、もしくは7倍のお湯で溶かすことを推奨していますので、比較するとかなり薄いミルクです。これでは体の維持はできても、増体に回すための栄養が足りません。
A農場さんでは代用乳を1回560gに増やして、お湯の量は変えずに粉とお湯を合わせて4リットルにしてもらいました。
560g/4000ml=0.14なので14%濃度(7倍希釈)の代用乳になりました。
製品のタンパク質や脂肪分の組成から計算すると、DGが0.9くらいだったのでそこそこ大きくなってくれそうです。
B農場さんの場合
B農場さんの子牛は、40kg程度で生まれたのが3週間経っても45kg程度とあまり大きくなっていない状況でした。ちなみにスターターの食い付きはとても良いです。
ミルクの給与は1回500gの代用乳を、3リットルのお湯に溶かして朝晩与えていました。
500g/(500g+3000ml:全体量)=0.14なので14%です。理論上は「7倍希釈」なので正常な濃度ですね。
これで大きくならないのはおかしいです。
ちなみに農家さんは代用乳をお味噌汁を入れるお椀で計っていて、山盛り1杯が500gと考えていました。計ったのはかなり前だそうです。
何かおかしいとしたらここだと思い、改めてお椀に山盛り一杯の代用乳の重さを計ってみました。
すると、なんと230g。濃度7%、14倍希釈のミルクをあげていたことになってしまいました。
これでは大きくなるわけもなく、この子牛がスターターを必死で食べている理由も判明しました。
そりゃあお腹空いてるもんね…。
でも、図らずもスターターを早めに覚えてくれたのは怪我の巧妙かもしれません。
もちろん、お椀山盛り2杯と気持ち程度足した量で500gになるように変更してもらいました。
濃度14%です。スターターはもう覚えているので、ここから一気に巻き返しです。
もう一度見直しを!
結果的に「なんだその程度のことかい」という話でしたが、ぜひコラムを読んでくださった方は今一度代用乳の濃度計算をし直してみてください。意外に間違ってる、計り方が毎回違うからぶれてたりするかもしれません。
一つ注意点として、代用乳製品はそれぞれタンパク量や脂肪分が違ってくるので量を増やすときには十分注意してください。特に脂肪分が高めの製品は急に増やすと消化能力が追い付かずに下痢をしやすくなります。基本的には袋に書いてある量であげれば大丈夫ですが、早く大きくなってほしくて高濃度を攻めすぎないようにお気をつけください。
ノベルズブリーディングサービス 外谷