ちょっと待って!その移植でホントに受胎する?
風が冷たい日が少しずつ出てきましたね。3番草が終わり、各所でデントコーンの収穫がそろそろ始まるころでしょうか。刈り取りを急ぐあまりに事故を起こしたり、怪我をしないよう、くれぐれもお気を付けください。
今回は繁殖障害・リピートブリーダー牛への受精卵移植という技術の意義や使いどころについて書きたいと思います。
多くの酪農家さんは、人工授精を何回も繰り返しても妊娠しない牛に対して、和牛精液の人工授精後に、同一の和牛精液を使った交雑牛体外受精卵(屠場で手に入ったホルスタイン卵子に和牛精液を体外受精させたもの)を使用した追い移植や、安価な和牛受精卵を使用していることと思います。
一般的にこれらを使用することは、受胎しない牛に以下のことが考えられると仮定しての判断です。
卵管狭窄・閉塞、インターフェロンタウ不足には受精卵移植が有効!
- 卵管狭窄、閉塞=卵管が極端に狭い・または閉じているせいで受精卵が卵管を通過して子宮に降りられず着床できない。
- 早期胚死滅=受精卵から放出されるインターフェロンタウ(妊娠認識や黄体維持に働く物質。詳細は別途取り上げます!)が足りず、親牛が受精卵を自己と認識できないことで妊娠しない。
1においては、受精卵移植により受精卵を外部から子宮へ置いてあげることで妊娠させることができます。
2においては、インターフェロンタウを十分量放出できる受精卵を移植するor追い移植による人工授精由来受精卵と移植由来受精卵の2つの受精卵によりインターフェロンタウの量を増やすことで妊娠させることができます。
不受胎の原因はホントにそれ?
いかがでしょうか。今追い移植を試みているその牛は、①と②の問題で今まで妊娠しなかったと判断できていますでしょうか。
実は肝機能が低下している、肺炎や乳房炎、子宮炎など体のどこかで炎症が起きている可能性はないでしょうか。
上記の場合では根本的に妊娠できる下地が整っていないので、追い移植を試みても妊娠する可能性は低いです。
おおまかで良いので不受胎原因をある程度特定することは、授精・移植に関わる経費削減、さらには繁殖サイクルの遅れを最小限にするために必要なことです。
では、次回は実際の事例を見ながら乳成分から不受胎原因を探っていきましょう。
外谷