移植師コラム

りぴいと☆ぶりいだあ②食らえβカロテン!

りぴいと☆ぶりいだあ②食らえβカロテン!

前回は追い移植の意義の話と、授精や移植の前に受胎可能性をある程度算段した方がよい、という話でした。では、繁殖障害牛に実際に行った処置と受胎した事例をご紹介します。

 

 

3産目、DIM300日時点の乳量41キロ、低MUNの優良生産牛

弊社に移植依頼をいただいたホルスタインで、表記の通り生乳生産において優秀な牛です。つなぎ飼い、餌は分離給与、2回搾乳というスタイルで飼養されていました。

 

過去6回繁殖に挑戦しましたが受胎せず、その後2021/6/12に弊社の和牛体外受精卵の新鮮胚移植を実施し、無事に受胎しました。

 

受胎までの道程をご説明します。

 

移植依頼をいただいた5月の時点で、DIM283、BCS2.75、日乳量41キロ、乳脂肪率3.23、乳たんぱく質率3.27、乳糖率4.25、MUN(乳中尿素窒素)が6.3、B分房が慢性的な乳房炎という状態でした。

 

また、前述したように過去6回ホルスタイン通常精液もしくは和牛精液の授精を行っていましたが、自然発情が観察されたのは最初の3回目までで、それ以降は発情が観察されず、シダーを利用した定時授精を行っていましたが受胎しなかったとのことでした。

 

乳検の数値から見る乳量の多さ、乳糖率の低さ、MUN値の低さ、低BCSと「発情が観察されない」という事実から、「摂取したタンパクの利用効率が非常にいい牛であり、それにより肝臓が常に疲労しており、性ステロイドがうまく作られず発情が見られない」と判断しました。

 

乳検実施日 2021/05/20
DIM 283
日乳量(kg) 41.6
脂肪(%) 3.23
無脂固形(%) 8.52
蛋白(%) 3.27
乳糖(%) 4.25
体細胞×1000/ml 167
尿素(mg/dl) 6.3

表1.移植実施前の乳検データ

 

 

食らえβカロテン!

そこで、ターゲットを「発情が戻ってくるようにすること=肝機能・卵巣機能の回復」とし、βカロテンとビタミンA,D3,Eの入った牛用補助飼料を同期化処理をしている間に通常の5倍量で給与するように依頼しました。これは、βカロテンの日給与量が1500mgになる設定です。ちなみに、大変お世話になっている獣医師の方からのご助言をそっくりそのまま流用した方法です。

 

 

すると、同期化処理のシダー抜去後の推定発情日に、しばらく見られなかった明瞭な発情が観察されました。その発情日を0日と設定、7日後に受精卵移植を行い無事に受胎することができました。

 

長くなってしまったので、続きはまた次回。

 

次回以降は、βカロテン、その他ビタミンがどのように作用したのか、今回の事例の肝となる部分のお話です。

 

読んでいただきありがとうございました。

 

外谷

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