発情を見極める
あけましておめでとうございます。
新春のお慶びを申し上げます。
久々のコラム更新です。またまた基本的なお話ですが。。
昨年、移植において大きく変更した点がありました。
簡単に言うと、農家さんには極力同期化処理を控えていただき、自然発情が来たら7日か8日後に和牛新鮮胚を移植するというやり方です。
当たり前じゃねーか、と言われそうですが、未熟な私自身はなかなか気づけていなかったことでしたので文章にして整理を。
発情日のズレ及び移植日のズレ
一昨年2021年の移植において困ったことの一つが、同期化処理における発情日のズレでした。
発情日のズレ自体はよくあることなのですが、特に妊娠鑑定時に黄体を確認したらその場でPGを投与して黄体退行を促すやり方において、発情回帰までの日数が大きくバラつくことが悩みでした。
2021年時点では、PG投与から2日後に発情が回帰すると断定して移植に回していました。(そもそもこの前提が間違っているんですが)
ですが、2日後の推定発情日に黄体が残っていて発情兆候もないというケースが多発し、レシピエントの搾乳牛の代謝能と、妊娠鑑定時のDay(前回発情から何日目か)によってはPG投与から6日後に発情が戻るということもありました。
2021年段階では発情日のズレに気づけておらず、そのまま移植に回してしまっていたために受胎率を落としてしまっていました。理論上、発情から5日目で移植してしまっていたりしたためと思われます。
同様のケースがいくつかの農場であったため、2022年からは全ての同期化処理において発情行動をつぶさに観察するように畜主に依頼し、きちんと発情が観察されてから7日ないし8日後に移植することにしました。
以下、一件の酪農場において上記を変更してからの成績になります。
フリーストール120頭、2回搾乳、全て経産牛への移植、黄体強化のためのhCG投与は行っていません。
和牛OPU-IVP胚を新鮮胚で移植しました。
自然発情、オブシンク(GnRH投与から7日後にPG)、PG(黄体確認後PG)の三種を推定発情日から移植した2021年と、発情行動を確認した2022年とで比較しました。
図1.同期化処理別
2022年、発情兆候確認をきちんと行うようになってから全ての同期化処理において受胎率向上が見られました。移植日の設定に間違いがなかったためです。
発情行動を示さない牛においては卵巣状態の変化で移植日の設定をしました。
図2.産次数別
上記、産次数別データです。
平均産次数から、若牛が多くなったから結果的に受胎率が上がったのかとも思いましたがそういうわけではありませんでした。
結論
2021年の移植において受胎率を下げてしまったのは明らかに”人為的ミス“でした。
私の思い込み仕事が農家さんに損失を出してしまったのです。
移植に関して技術料をいただいている身として恥ずべき事です。
以前、授精師は加点ができないという内容のコラムを書きましたが、まさしくコラムに書いた人為的な減点をしてしまっていました。深く反省しております。
しかし、ただ失敗したわけではありません。こちらの農場において、レシピエントは十分に受胎能力を持っていて、新鮮胚移植であれば経産牛においても50%~60%の受胎が確保できることが分かりました。
今年も発情兆候を見極めて、妊娠率を保ちながら個体販売による収益アップに貢献できるように頑張っていきたいと思います。
弊社の場合は日曜日以外は和牛OPU-IVP胚の発生があるので、自然発情に新鮮胚を移植できる体制が整っています。新鮮胚であればホル経産牛でもある程度の受胎が確保できるので、この武器を生かして酪農家の皆様に貢献していきたいですね。
外谷