りぴいと☆ぶりいだあ④食らえβカロテン!!!~終~
前回の続きになります。
βカロテンとビタミンA・Eの給与で肝機能の回復、黄体産生を促しましたが、この処置が適当だったかどうか、のお話です。
短期決戦用の給与量
処置自体は、βカロテンを日量で1,500mg、ビタミンEは150mg、ビタミンAは125,000IUで5日間の給与です。今回使用した製品の推奨する給与方法はこの五分の一ですが、移植日までに時間がなく、同期化処理中に終わらせなければいけなかったためにこの方法を取りました。
授精・移植までに時間が取れるようであれば、30日ほどかけてビタミンEだけを給与してもおそらく効果はあったと思われます。血液成分を見ていないので肝炎かどうかは断定できませんが、乳糖率の低さから免疫機能低下=肝機能低下は間違いないと思われます。ビタミンE給与で肝機能が回復すれば、それだけで性ステロイドも十分作れた可能性があります。
また、βカロテンは良質な粗飼料(特にマメ科のルーサン=アルファルファ)に多く含まれます。イネ科牧草のチモシーにも比較的多く含まれていますので、これらが充足していれば問題ないと思われます。
同期化処理方法-E2を利用したシダーシンク-
今回移植に持っていくまでの同期化処理方法は以下の通りです。
私が考案した方法ですが、特別なことはやっていません。今回はPGをシダー抜去日に2.5ml、翌日にも2.5mlで打ってもらいました。ちなみにCIDRはイージーブリードを使用しています。排卵はE2で行いました。
今回の本質は何?
今回の肝は、和牛新鮮胚の移植で受胎したことではなく、CIDRを利用した同期化処理で見られなかった明瞭な発情が回帰したことです。排卵にE2を利用した効果ではないのかと思われるかもしれませんが、過去発情が来なかった同期化処理でも排卵にE2を使っていたので、それだけの効果ではありません。βカロテンやビタミンA・Eが牛の肝臓・生殖機能回復を手助けしたおかげです。
更に言ってしまえば、本牛はこれらの処置で人工授精でも妊娠したと思います。逆に言えばこれらの処置をしていなければ、受精卵移植でも妊娠しなかったと思います。
この点が、最初にお話しした追い移植をする前にそれが適当かを考えましょう、というお話に繋がります。
https://nobels.co.jp/nbs/column/column-61.html
いかがでしょうか。今回はただの一例に過ぎませんので、これだけで「βカロテンやビタミンEが充足していれば受胎する!」と結論づけるのは早計ですが、授精、移植前に考えるきっかけになればと思います。
繰り返しですが、私は「乳糖率」を主に指標にしています。この辺の話も取り上げたいですねー。
余談ですが、βカロテンやビタミンEは乾草よりも生草に多く含まれています。ということは、ルーサンやチモシーの放牧地で草を食べている乳牛は、よく発情して受胎率も良いのでは?と思います。もちろん土や草の地面はコンクリ床より踏ん張りが効くのでマウンティング・スタンディングしやすいというのもありますが。
放牧やられている方、もしよければデータ取らせてほしいです!気になります!