「アンモニア態窒素を豊富に含む消化液には、即効性がある」。帯広畜産大学(環境農学研究部門)の梅津一孝教授は、有機液肥「消化液」の特長をこう指摘。私たちノベルズグループは2017年度に梅津教授と共同研究を実施しており、研究結果をレポートします。
「消化液のメリットや使い勝手を知ってほしい」
帯広畜産大学の梅津教授とノベルズグループによる今回の共同研究では、十勝管内清水町の御影地区でグループが運営するバイオガスプラント「御影バイオガス発電所」で生産されている「消化液」のサンプルを分析。堆肥やスラリーに比べて、アンモニア系(態)窒素を豊富に含み、悪臭も大幅に軽減され、活発なメタン発酵によって有機液肥としての高いポテンシャルをもつ「消化液」が、2017年に稼働した同プラントにおいて安定的に生産されていることが確認されました。
道内では、現在すでに、同プラントを含めて100基程度のバイオガスプラントが稼働していますが、梅津教授の研究室では1970年代から、民間プラント会社と共同で実証プラントを建設して試験運用するなど研究を本格化。畜産分野における再生可能エネルギーとして、バイオガスプラントに注目が集まる現在の国内状況について、梅津教授は「再生可能エネルギー固定買い取り制度(FIT)の後押しもあり、爆発的にプラントが増加しており、もっと多くの農家の方々に、その副産物である消化液のメリットや使い勝手の良さを知っていただきたいと考えています」。
堆肥に比べて即効性が期待でき、悪臭も大幅軽減
「御影バイオガス発電所」では、酪農牧場から、ふん尿や飼料の残りといったバイオマスを原料として受け入れ、加水しながらかき混ぜて、密閉空間の発酵槽に送り、最長で40日間にわたって38度前後の温度でメタン発酵を促進させます。メタンガスを発生させて発電を行うと同時に「消化液」を生産しますが、処理前の原料であるバイオマスと「消化液」の成分を比較すると、窒素やリン酸といった肥料成分の総量に変わりがなくとも、窒素成分の組成が、「有機態窒素」から「アンモニア態窒素」に変化していることなどが確認されています。
一般に、堆肥やスラリーには「有機態窒素」が多く含まれていますが、堆肥やスラリーを畑に散布する場合、 この「有機態窒素」が、微生物などの働きによって「アンモニア態窒素」に変化して初めて、窒素成分を作物が栄養分として初めて吸収できると考えられています。ただし、この変化のプロセスには一定の時間かかることから、肥料効果が現れるのを待たなければなりません。 その点、「消化液」には、そもそも「アンモニア態窒素」が多く含まれていることから、「堆肥やスラリーと比較すると、消化液には肥料としての即効性があるわけです」(梅津教授)。
また、「消化液」を散布した畑では、微生物の活動が活発化することから、土壌では団粒構造の形成が促進される効果が期待でき、「消化液を長年散布してきた畑では、団粒化が進み、土を手に取ると、空気をはらんでフカフカしていて、雨天時の畑の水はけも目に見えて改善します」(梅津教授)。
また、一般に堆肥やスラリーは散布後の臭気が課題とされますが、梅津教授は「消化液は、肥料としての効果もありますが、臭気の抑制が最大のメリットだと考えています」と指摘。近隣の住民に対する配慮から移転や廃業を検討していた酪農牧場が、バイオガスプラントの導入で臭気の問題から克服した事例もあるといい、「堆肥やスラリーと比較すると、消化液は、散布後の臭気が大幅に抑制できることも、バイオガスプランの普及が進んでいる大きな要因」と指摘しています。
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