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田舎暮らしは仕事も生活も出会いの宝庫「十勝の美しい景色に惹かれ転職、ダブルワークで軽やかに生きる女性」~カフェオーナー田井孔美さん~
移住の豆知識
公開日:2022年4月11日

田舎暮らしは仕事も生活も出会いの宝庫「十勝の美しい景色に惹かれ転職、ダブルワークで軽やかに生きる女性」~カフェオーナー田井孔美さん~

帯広市内から車を走らせること30分。鹿追の山道の合間にある「南国的屋台Cafeライオンのいえ」は2019年にオープンしたカレーが人気のお店です。一人で調理からサービスまでをこなすオーナーは田井孔美さん。不便な場所にも拘らず彼女の作るカレーを目当てに多くの人が足を運んでいます。

目次

ジャマイカでの経験

孔美さんは釧路市生まれ。札幌の大学を卒業後、そのまま市内の生命保険会社に就職しました。学生時代からの夢であった「飲食業に携わりたい」との思いが募り、会社を辞めて飲食店のアルバイトを続け、26歳の時「シルディ」というカレー店で働き始めます。

数年が経ち、オーナーの引退をきっかけに、孔美さんは店舗を譲り受けることになります。

「シルディ」の経営を受け継ぐまでの準備期間中に、孔美さんはメキシコとジャマイカに旅立ちますが、この経験がその後の孔美さんの意識を大きく変えるきっかけとなりました。孔美さん、29歳の時でした。

ジャマイカは失業率が高く、日中でも時間のたっぷりある人々で街はあふれています。露店では、味付けされた鶏肉を焼いた「ジャークチキン」が人気で、孔美さんもこの美味しさの虜(とりこ)になります。ドラム缶に火を起こし、調理されるジャークチキンを、急ぐことなく待ち続ける人々の姿に驚きを覚えながらも、そこに流れるゆったりとした時間と人々の笑顔に、生活は貧しくとも心の豊かさを感じました。

ジャマイカを旅するまで、札幌での生活にストレスを自覚していたわけではなかったはずなのに、孔美さんの身体の中に「固い芯」ができていたことに気づきます。

決まった時間に起きて、少しでも早い地下鉄に飛び乗り、時計を気にしながら仕事に追われる生活…。

ジャマイカでの緩やかな時間の中に身を置いているうちに、肩こりや湿疹も次第に改善されて身体がとても楽になり「体の中の芯がスーッととけていくのを感じました」。

先代の味を忠実に継承したカレーはさらに人気を集め、「シルディ」はその後も順調に売り上げを伸ばしてゆきました。しかし、そんな充実した日々の中にも、ジャマイカでの「体の芯がとけてゆく感覚」を時として思い出します。

背筋を正し、規則的に流れてゆく忙しい日々。ジャマイカのように少しでも緩められたならどんなに豊かな気持ちになれるのだろうと。

十勝へのあこがれと移住

実家のある釧路と札幌を往復している途中で通過する十勝。その景色の美しさにかねてから心惹かれ、いつかここで緩やかな生活をしてみたいという思いが日に日に募っていった頃、長年のパートナーであった田井正樹さんが、清水町の「十勝地域おこし協力隊」として移住することが決まり、孔美さんも「十勝に移り住むなら今だ」と決心します。二人はともに移住し、結婚も決め、新たな生活をスタートすることになりました。

移住後、孔美さんは町内にある観光庭園「十勝千年の森」で自然に触れながら汗をかき、また酪農業にも従事し、仕事を通して地域に親しんでいきます。

酪農業を経験したことで、食卓に食べ物が並ぶまで、また人の口に入るまでに、どれだけ多くの人が関わっているのかと、現場で働いて改めて得た思いでした。

移住者同士のネットワークも広がり、ある日「喫茶店を経営していた人がお店を引き継いでくれる人を探している」との声が。さっそく店舗を訪れ、建物とその周りの景色をひと目みたとき、「ここで自分のお店を構えよう」と決心をするのに時間はかかりませんでした。

店舗名は「ライオンのいえ」。それは1930年代のジャマイカで発生した思想運動「ラスタファリ」のシンボルであるライオンから名付けられました。

十勝の景色がエネルギーの源

清水町の自宅から「ライオンのいえ」にたどり着くまで、建物らしいものは何もなく、あるのは十勝の自然だけ。「この景色がたまらなく好き」と笑顔になる孔美さん。特に冬の青空が何より気に入っていて、厳しい寒さの日でも十勝では雲一つない青空、それは釧路や札幌では出合うことのできない美しさです。

店内に入るとまず目に入るのが、一枚の絵になるような大きな窓です。季節ごと、時間ごとに表情を変えるそこからの景色は確かに美しく、孔美さんの体験した「身体の芯がとける」ような気持ちに陥ります。

「ライオンのいえ」は、現在は冬季休業中ですが、ゴールデンウィーク頃から開店予定です。
休業期間中、孔美さんは芽室町の道立農業試験場の「大豆科」という研究室の助手として働いています。孔美さんにとってはどちらも大切な仕事であり、双方を上手に両立させています。

「ライオンのいえ」のこだわり

孔美さんは北海道フードマイスターや野菜ソムリエプロの資格を有し、地元の素材にこだわった体に優しい食を提供しています。

10種類以上のスパイスを使ったカレーは仕込みに3日間かかり、孔美さんひとりで提供するのにはこれが限界。決して無理をしない自然体の姿勢がここにも表れます。

丁寧に作られ彩り美しい「ライオンボウル」や「ゴーゴーチキン」はわざわざ車を走らせでも通ってくるファンを定着させました。

じっくり煮込まれたライオンボウル
彩り鮮やかなゴーゴーチキン

孔美さんからのひとこと

最後に、「十勝に移住を考えている人に伝えたいことは」との質問に、孔美さんは言葉を選びながら答えてくれました。

「田舎や農業が気になるという方は、田舎暮らしをすることで視野が広がり、価値観が変わるかもしれません。それによって、都会の良さを再発見するかもしれません。もし都会に戻ったとしても新しい目線で暮らすから、以前より彩りを増すかもしれません。

百聞は一見にしかず。移住したいという熱い想いがあるのなら、一度北海道、十勝を五感で感じていただきたいなと思います。」

南国的屋台Cafeライオンのいえ
住所:北海道鹿追町上然別西13線16-10
電話:080-8290-3687
営業時期:土・日・月曜
営業時間:11:00~16:00

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