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田舎暮らしがきらいだった少年時代。故郷・十勝に見つけた、ここだけの自然体験。~ジュエリーアイスの名付け親 浦島久さん
移住の豆知識
公開日:2022年1月24日

田舎暮らしがきらいだった少年時代。故郷・十勝に見つけた、ここだけの自然体験。~ジュエリーアイスの名付け親 浦島久さん

目次

田舎は嫌だ。早くここから出たい

「実を言うとあまり田舎暮らしは好きではなかったんです。と言うか、むしろ少年時代は嫌で仕方がありませんでした」。ジュエリーアイスの“名付け親”である浦島久さん(69)は遠い昔を懐かしむように語ります。

浦島さんは北海道十勝の小さな町、人口わずか3000人(生まれた当時は人口約1万人)あまりの豊頃町茂岩にあった電器店で生まれました。「中学校時代は帯広(人口16万人、豊頃町から車で約45分)に遊びに行くと同年代の中学生が都会的に見えて。何もない豊頃は本当に寂しく感じ、早くここを出たい」と思っていました。

中学を卒業後、帯広の高校を出て、大学は小樽市の小樽商科大学に入学しました。「国際化」が叫ばれ始めた時代、浦島さんは大学の英語部で英語学習に没頭しました。大学卒業後は大阪に本社がある松下電器産業(現在のパナソニック)に就職。「特に嫌だったと言うことはありませんでしたが、大都市の水や空気が合わず、緑も少ない。どうも自分が生きていく環境ではないと思ったのです」と当時の心境を振り返ります。

撮影:浦島久

第二の人生は故郷の十勝で英語学校開設

順調にいけば大企業のエリートサラリーマン、というところでしたが、わずか1年半、23歳のときに都会生活に見切りをつけ、故郷に戻って英語学校を創業しました。「戻る場所は北海道と決めていましたが、札幌は都会過ぎる、豊頃は田舎過ぎる、小樽も考えましたが、やはり故郷に近くて環境もさほど変わらず、程よく便利な十勝の帯広に決めました」と言います。

写真については若い頃はさほど興味がなかったようですが「小さい頃はオヤジ(甲一さん・2001年、77歳で逝去)がよく晩酌しながら自分の写真を見ては自画自賛していました。

『久、どうだ?この写真。構図がみごとだろ』などと自慢げに見せられました。

今思えば、自分がすんなり写真の世界に入れたのはその頃の潜在意識があったからでしょう」と回想しています。

さらに「当時の父親の自慢話は今の自分の撮影にも影響しているので、最初の師匠といえますね」と照れながら語ります。その後、甲一さんは豊頃のシンボルツリーであるハルニレの撮影を続け、写真集も出版。「ハルニレの写真ならば浦島甲一」と言われるほど、世に認められる写真家となりました。

撮影:浦島久

ファインダー越しに自身の心境を発見

浦島さんが本格的に写真を始めたのは2009年。甲一さんが他界した後、甲一さんが追い続けたハルニレを撮影し「偶然にも、始めて間もなく、すごくいい写真が撮れて、周囲が認めてくれるようになった」ことがきっかけでした。以来、どんどん写真の世界にのめり込み、いつの日かファインダーを通して見えてきたものは、故郷の素晴らしさとそれを思う自分自身の気持ちでもありました。

冬のジュエリーの撮影は過酷

ジュエリーアイスについては「一般の人にとっては、珍しくもなんでもない。“浜辺に打ち上げられる氷”でしたが、日本では唯一無二、世界的にもとても珍しい自然現象だと思えば見る目が変わるものです」と心を奪われ、2012年からは「もっと美しく、もっと人の心を動かせる写真を撮りたい」と情熱を燃やし、目標を高めていきました。浦島さんは、宝石のような輝きから「ジュエリーアイス」と命名し、2018年には自身が撮りためた写真で写真集を出版。“ただの氷”が北海道の厳冬期だけに海に打ち上げられる“冬のジュエリー”として多くの人々の心を揺り動かしたのです。

ジュエリーアイスの撮影はその美しさとは裏腹に想像を絶するほど過酷です。海から昇る朝日と一緒に撮影するのがベストショットです。そのため、帯広からは午前3時に起床、3時半に出発。4時半ごろ現地の駐車場に到着すると、そこから撮影機材を背負ってさらに30分、薄暗い海岸を十勝川河口に向かって歩きます。砂浜の海岸は遮るものがなく、強風の日はさらに過酷さを極めることになります。

しかし、朝日が海の彼方から顔を出し、海岸線に無数に散らばるジュエリーアイスを照らし始めると「無心にシャッターを押し続けます。光を受けた氷たちはあたかも『私を撮って』と一斉に語りかけるよう。どこからどう撮るか、一瞬の判断です。朝日はすぐに昇ってしまうので、いい色を捕らえられる時間はわずかしかありません」と撮影のきびしさ、難しさを訥々と語ります。

撮影:浦島久
撮影:浦島久

撮影地に近いのは田舎暮らしの特権

撮影シーズンは年によってまちまちですが、12月末から3月上旬までの約70日間。この最も寒さが厳しい期間に毎年浦島さんはなんと50回ほど通っています。

「自分が名付け親で、豊頃町から観光大使の称号までいただいています。人に『今年のジュエリーはどうですか?』と聞かれて『最近行っていないからわかりません』って訳にはいかないですから」と責任感をにじませます。

「東京からわざわざ来る人も多く、私はせいぜい1時間少々で撮影地に行ける。苦に思ったことはないし、これは田舎暮らしの特権でしょうね」と平然と話します。

撮影:浦島久
撮影:浦島久

強い郷土愛に裏打ちされた作品

「北海道には美しい景色や自然現象はたくさんありますが、豊頃町にはジュエリーアイスと風雪に耐え大地に根差した1本のハルニレの木。世界に通用する被写体が2つもあります。こんな場所は他にはないと思います」と胸を張って語り、「私は故郷に自信と誇りを持っており、豊頃町茂岩に生まれ育って本当によかったと思っています」。

浦島さんが撮影するジュエリーアイスの写真には、こんな気持ちが込められているのです。

撮影:浦島久

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