アニマルウェルフェアとは?日本の畜産業界の実例もご紹介!
皆さん、昨今の畜産業界で大きく取り上げられている事柄で『アニマルウェルフェア』という言葉を聞いたことがありますか。この言葉は、『動物に対して、生まれてから死ぬまでの身体的・心的状態』を指した言葉です。畜産業界は動物の命を扱うことで、私達の食欲の需要を担保しているわけですが、最近、彼ら経済動物の命の扱い方に関して、様々な議論がなされています。今回はそんな『アニマルウェルフェア』を皮切りに、この言葉が生まれた背景や、日本と世界の畜産業界の違い、牧場ごとの取り組みについて説明していきます。まずは知ることから始めましょう!
アニマルウェルフェアって何?
まずは『アニマルウェルフェア』という言葉について理解することから始めていきましょう。一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会によれば、アニマルウェルフェアとは「感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な暮らしができる飼育方法をめざす畜産のあり方です。」と説明されています。
他の文献では、その定義が少し曖昧な部分や、家畜の飼育方法まで追求されていないものもありますが、本記事では、上記の定義をもとに話を進めていこうと思います。要は、人間の事情だけではなく、家畜にも寄り添った飼養管理を心がけよう、ということですね。
アニマルウェルフェアを実現する上で、農林水産省のHPでは、「5つの自由」の視点を持つ上で、牧場のアニマルウェルフェアの状況を理解出来ると紹介されています。
それが下記の5つです。
とても倫理的な視点であり、当たり前と言えば、当たり前の視点です。人間もこちらの5つの自由がなければ、とても苦しい人生を送ることは容易に想像出来るので、「その視点を家畜にも持とうよ」、ということですね。具体的には、「水と食料が一定以上確保出来るような飼養管理を行っているのか」や「牛が病気を発症しないような清潔な環境を提供できているか」などといった対策に派生することができそうです。
一方で、よく混同されがちな言葉で、「アニマルライツ」という言葉も存在しますが、「アニマルウェルフェア」とは別の言葉として理解する必要があります。大きな違いは、アニマルウェルフェアは家畜利用を認め、アニマルライツは家畜利用を否定するという違いがあります。アニマルライツはそもそも動物を人間のタメに利用することを否定しているので、家畜だけではなく、動物園や動物実験にも異議を唱え、人間の管理そのものを無くし、自由な生き方を動物に与えることを目的とした言葉とも言えるでしょう。
アニマルウェルフェアは、家畜として生きてはいるものの、その期間をできるだけ動物にとって、よい生涯にしてあげられるように、人間が動物に手をかけることを指します。倫理的な問いではありますが、現在の動物科学や家畜行動学によって評価されることで、できるだけ定量化した基準を作成することも現在進行中で行われており、これからのアニマルウェルフェアの動きに注目が集まっています。
アニマルウェルフェアの歴史
そもそもアニマルウェルフェアという概念が誕生したのはキリスト教からです。現在の動物養護の思想を支えたのは、特に16世紀以降、プロテスタントによる宗教改革と啓蒙活動によるものだと言われています。近世のプロテスタント神学者たちは、ヘブライ語の聖書の中に、「人間のために動物を搾取・屠殺して良いが、その利用に不可欠でない限りの動物のあらゆる苦痛を避けねばならない」という教えを発見し、広めます。ある文献によれば、1970年代前半に至るまで、欧州と北米に於ける動物福祉思想を支えたとの見解もあるようです。
17~18世紀になると、自然科学の進歩や、功利主義思想の発展に伴い、これまでは人間が世界の中心であり、人間のために世界があるという、人間中心的思想がありましたが、その思想は弱まり、より動物への尊重を精神面ではなく、倫理的にロジカルに主張する事が出来るようになりました。そして18~19世紀のイギリスで、動物福祉の法律が初めて制定されて、各諸国へとその動きが伝播して言ったのです。現在、動物福祉分野に関しては、ヨーロッパ諸国が一番の先進国であると言われていますが、これは動物福祉の歴史が長いことが要因の一つだと考えられます。また、産業革命の流れと共に、科学的に議論を重ねており、その積み重ねは200年以上の歴史があるという点では、日本が学ぶべき点は多いでしょう。
欧州のアニマルウェルフェアの取り組み
実は日本は、アニマルウェルフェアの後進国と言われており、特にヨーロッパ諸国と比べ、その理解と普及が足りないという話をよく聞きます。その原因は、日本という地理的な環境だったり、食文化だったり、様々な要素があると思いますが、何にせよ他の国から見ると、全体として、まだまだ課題が多い国だと認識されているのが現状なようです。そこで、まずはあるべき姿を知ろうということでアニマルウェルフェア先進国の取り組みを知識として取り入れることが始めましょう。
先程の歴史の部分でも取り上げたイギリスは、現在もアニマルウェルフェアの先進国です。法整備が進んでいることや動物愛護団体の活動が活発であり、日常的に動物福祉に関して考えることが出来る環境づくりが行えていることが大きな要因だと思います。
2006年にはアニマルウェルフェア法(Animal Welfare Act 2006)という法律が制定され、かなり具体的で、かつ踏み込んだ内容が網羅されています。具体的には「闘牛や闘犬などの動物を戦わせる行為の禁止」「検査官は人の飼養下の動物が苦痛を受けていると判断した場合、それらの動物の苦痛を軽減するために必要な措置を取ることができる」などが上げられます。畜産業界で言えば、鶏を「バタリーケージ」と呼ばれる狭い過密空間に押し込めて飼うことを禁止したり、牛や豚に取っての「5つの自由」が守られているかを徹底的に審査したりなど、畜産業を運営する上での要件は非常に厳しいものです。
日本でのアニマルウェルフェアの気運は?
イギリスの取り組みに比べれば、日本は具体的な法律まで制定されておらず、指針や意見の収集に勤めているという状況ですので、アニマルウェルフェア後進国と言われても仕方はないかもしれませんが、昨今の日本でもその動きはだんだんと活発になってきました。以下にその取組事例を挙げていきます。
農林水産省のHPでは、アニマルウェルフェアの欄を大きく設けて、アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針や実践までの手筈などをまとめた資料を公開しています。家畜を快適な環境下で飼養することで、家畜のストレス軽減や疾病予防に繋がり、結果的に生産性の向上や安全な畜産物の提供につながるということで、アニマルウェルフェア普及を推し進める方向です。
また、国だけではなく、地方自治体の動きもでてきました。山梨県では独自にアニマルウェルフェアの認証制度を始めているため、山梨県では、積極的に取り組む畜産農家が増えてくるだろうと予測されています。
やまなしアニマルウェルフェア認証制度についてもちろん、牧場単位でアニマルウェルフェアに配慮することも大事です。弊社ノベルズグループでも、牛にストレスを与えないことと健康に配慮することが、生乳や牛肉の質と生産性にも影響を与えることが、弊社所有の3万頭の牛のデータからわかっています。日々、牧場スタッフだけではなく、外部の獣医師の先生やコンサルタント、研究機関と協力し、業界のアニマルウェルフェアと生産性向上の両立を目指し、日本一の牧場を目指しつつ、持続可能な社会を目指していく所存です。
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