田舎暮らしで仕事の不安はなかった。50代女性移住の本音を聞く
「移住から定住に決意させたのは『ひと』でした」と語るのは、大阪と東京で声優・ナレーターとして活躍する中で、北海道移住を決めた八所かおりさん。北海道への移住を果たした後に、芽室町で事業を起こして定住を決めた理由を伺いました。
◆鹿児島生まれ、大阪育ち
◆2015年移住
仕事が充実してこその田舎暮し
地方移住や田舎暮らしに憧れる人は多いが、最大のハードルは仕事。ところが、八所さんは、大手企業のCMや海外映画の吹き替えなど、大阪・東京で声優・ナレーターとして活躍する中で、北海道への移住を決め、さらには定住するための事業を起こしました。
十勝の芽室町でNPO法人 Qucurcus(ククルクス)』を立ち上げ、副代表理事をしているそうですね
はい。芽室町の地域おこし協力隊OBOG3名で設立した法人で、私の担当だったシティプロモーション・移住定住に関わる業務のほか、就労支援、サイクルツーリズムなどの体験型観光、ワーケーション促進、農産物の販売(物販)など、芽室町を盛り上げることに繋がる事業を実施しています。
本職である声優やナレーターはしていないのですか?
やっていますよ。声優とナレーションは自宅のスタジオで収録ができるので、主にオンラインで仕事を受けています。もちろん、最近は開くのが難しいですが、リアルのイベントの司会業務も請け負っています。あとは、十勝のコミュニティラジオ「JAGA」と「FM WING」の両局で出演もしています。詳しくは私のホームページを御覧ください
http://kaori-yatokoro.com/
まさに、リモートワークですね。移住のきっかけも「北海道でも仕事ができる」ということだったと
それは違うんです。少しだけ経歴をお話ししますね
長くなりますか?
なります
読者の皆さんには、3分以内で読める分量でお届けします
……。生まれは鹿児島県肝付町で、内之浦宇宙空間観測所のあるところですが、育ちは大阪府枚方市です。F1が大好きで、当時フジテレビで放送していた『F1グランプリ』のオープニングナレーションを担当していた窪田等さん(「情熱大陸」のナレーション等も担当)に憧れて、ナレーターを志したんです
私も毎週観ていました
世代が近いですね
続けてください
……。そして高校時代に、いよいよ「言葉を使う仕事に就きたい」と決心し、元アナウンサーが講師を務める喋り方講座のある短大に入学、講師の方のご厚意で放課後に喋り方のレッスンを受け、卒業とともに養成所に入所。事務所にも所属し、アルバイトをしながらナレーターの仕事をして行くことになりました。
ところが、いただけたお仕事はキャラクターショーの司会、ラジオのリポーターなど、ナレーションとは違ったお仕事でした。事務所を移籍して、大手放送局でのラジオCM担当やFM局のニュース担当といった大きなお仕事もいただきましたが、お芝居の仕事に興味を持ったことがきっかけで、31歳のときに上京。新たな事務所でや外国アニメや映画の吹き替えなど、お芝居の仕事に熱中していきました。
なるほど。で、北海道移住への話はいつになりますか
……。一人旅が趣味で、時間ができると国内外いろいろな場所に行きました。旅行で観て聞いて感じたインスピレーションは、すべて声優やナレーターの仕事に生きました。
3分経ったかと
いよいよ北海道編に突入します
では次の段落でお願いします
北海道への移住は出会いから
『情熱大陸』でお馴染みのナレーター窪田等さんに憧れて入ったナレーターへの道。苦労をしながらも着実に確実にプロとしての経験を積んできた八所さん。大阪と東京で順風満帆な都会生活を捨てて北海道へ移住した理由とは……
北海道には何度か足を運んでいましたが、札幌や小樽、富良野や美瑛といった、メジャーな場所ばかりでした。ところが、ある方から「道東もいいよ」と聞いたことをきっかけに、釧路湿原を目指します。自動車の免許のない私は、現地のアウトドアガイドに依頼。ところが、行程にムラがあり、終いには「時間がない」という理由から予約している宿とは違う町に降ろされる始末。「ありえない!」と憤慨しながら、別のガイドを探しますが見つからず、途方にくれている中で一本の連絡が入ったんです。
「キャンセルが入ったので行けますよ」。先程、予約いっぱいで断られたガイドさんでした。次の日、そのガイドさんは言います。「アクシデントで道東を嫌いになって欲しくないんです」。その言葉に感銘を受け、また、その後の親切丁寧な案内や魅力あふれる場所へのアテンド、様々な情報を教えてもらい、すっかり道東が好きになり帰ることができました
北海道への移住を決めたんですね
いえ。ただの旅の思い出です
……。
その後も何度かガイドさんに教えてもらった情報をもとに北海道を旅行します。十勝には1度だけ訪れたのを覚えていますが、移住は決めていません。移住を決めたのは、その後、何度も道東に足を運ぶうちに「道東、とくに十勝に住みたい」と思い始めたのがきっかけです
通ううちに少しずつ決めていったと
はい。それでも自動車の免許がない私の北海道移住は公共交通が整う札幌一択しかありませんでした。ですが、どれだけ探しても、ナレーターと並行して就きたいと思える仕事がなく悶々とする中で、たまたま地域おこし協力隊という働き方があるのを知り、東京・有楽町で開かれた地域おこし協力隊の説明会に参加。
担当者には「十勝が良い」と伝えましたが、「テレビやラジオなどで喋る仕事もあるので、八所さんに合うんじゃないか」ということで、三笠市を勧められました。そんなわけで、十勝ではありませんが、三笠市の協力隊員として2015年11月に北海道移住を果たしました。
移住までの道のりも話も長かったです
田舎暮らしで北海道のおすすめは…
旅先での思い出から田舎暮らしを果たした八所さんですが、希望の十勝ではなく、三笠市で2年数か月暮らすことになります。そこからどうやって芽室町に移住してくるのでしょう。
三笠市には2年数か月住んだそうですね
市から言われたとおり、ナレーターとしての仕事もあり順調にミッションをこなしていましたが、どうしても十勝への未練が捨てきれませんでした
そこでも悶々ですね
そうです。悶々です。そして2年が経った頃に舞い込んできたのが「十勝の芽室町で募集しているよ」という友人からの情報でした。すぐに連絡をとると芽室町の担当者の誠実さに惹かれ、最後は、面接後に何気なく私が提案した案について「それなら、●●課と●●課が連携すればできるね」という言葉が職員から出たことが決め手になりました。役場は横の連携がとれない組織だと思っていたのですが、芽室町は風通しが良さそうだなと。
芽室町編への突入バンザイ!
芽室町への移住は2018年5月です。地域おこし協力隊としては2回目なので、やるべきことはわかっていました。先ずは。芽室町のことを知らなくては何もできません。町の施設を巡って、ご挨拶がてら写真を撮らせていただいたり、先輩移住者にインタビューしたり、その先輩移住者から町のキーパーソンを紹介していただいたことで、数珠つなぎで多くの方々と出会い、話を聞けました。
町のことがわかったら、次に芽室町からのミッションである「移住促進」にむけたプランとアクションです。首都圏で人気が高まっている移住イベントへの参加を町に打診。本来の行政であれば「来年度予算で」と返されるところを、芽室町は「わかりました。予算確保は我々がなんとかしますから進めてください」と心強い一言から、急ピッチで準備を進めて参加にこぎつけられたんです。
そして、ナレーターとしての強みが活き、地元FMラジオでの芽室紹介の時間もいただくことができました。本来は十勝外へのアピールを考えがちですが、地元の理解を得るのも大切と考え、芽室町の取り組みをできるだけ十勝管内外へ伝える努力をしました。
芽室町に八所あり!となっていったわけですね
なっていません。なってほしいですが。努力中です
田舎暮らしで定住する決め手は「ひと」
念願の十勝での田舎暮らしがスタート。実は北海道に2年数ヶ月住んでも定住する気持ちにまでには至らなかった八所さんを決意させた理由とは
芽室町の地域おこし協力隊員としては初年度から大活躍だったわけですね
芽室町に移り住み、すべての企画提案が通ったことには驚きましたし、嬉しかったですね。よそ者だった私たちを町の皆さんが歓迎してくれた後もずっと応援してくれるんですよ。応援されたら期待に応えなくてはいけませんし、何より町民の皆さんが、私たちの企画や掛け声に反応してくれ、自主的に「これはどう?」「こういうやり方もあるよ」「私はこれならできる」と提案まで返してくれるんです。これこそ芽室町の強みだと思うんです
芽室町の皆さんの心は広くて強い!
おっしゃるとおりです。芽室の基幹産業である農業は、本州とは比較できないほど規模が大きく、農業を担う農家さんの心に余裕があるのも理由のひとつかなと思います。
何より、開拓精神というか、挑戦心の強い方々が多いのも特徴です。50~60代が前に進めば、背中を追いかける若い世代もついてきます。体力あふれる若い世代が加われば、大きなうねりに変わります。私たちはそのためのきっかけを作るのが役割だと思うんです
そして定住を決めたというわけですね
芽室に移り住み、1ヶ月足らずで定住を決めました。住めば住むほど、底の知れない魅力に取り憑かれていく自分がいました
どうして定住を決めたんですか
最初は、防風林だったり、景色や風土に惹かれたのもあります。ですが、最後は「人」でした。ひとのエネルギーの強さに惹かれ、気づけばステキな方々との出会いが私の心をウキウキ、ワクワクさせてくれていることに気づいたんです。
決定打となったのが、地域おこし協力隊として3年目に突入したタイミングで、ある方から「まちづくり会社を作るのはどうだ?」と声をかけてもらったことです。
田舎暮らしで重要なのは仕事だと思います。「自分が築き上げてきた経験を生かせるのであれば」と考えている人が多いでしょう。私もそうでした。ところが、今の仕事は「まちづくり」です。ナレーションの仕事も役に立つこともありますが、まさか私がまちづくり法人を立ち上げるなんて考えたこともありませんでした
いまの仕事は地方の課題解決
2回目の地域おこし協力隊の任期満了を前に、「起業したらどうだろう」の一言は、定住を希望していた八所さんにとって、一筋の光が見えた瞬間だったのでしょう。これからの八所さんと芽室町とは……。
改めて、「NPO法人 Qucurcus(ククルクス)とは?
何でも屋ですよ。シティプロモーションから、移住・定住促進、体験型観光・物販事業などなど、芽室町の魅力を全国に広めて、人口増に繋げる、あるいは関係人口を増やして、経済を発展させるためであれば、何でもやります
「定住」。つまりは腰を据えたということでしょうか
そうですね。据わりました。芽室町は飽きがこない町なんです。そして常に立ち止まらないんです。変化し、進化し続ける町が芽室です
大絶賛ですね。さすがです。ただ、課題解決も仕事ではないですか
もちろんです。課題は山積です。だからこそ飽きないんです。やりがいしかありません。芽室町は、十勝平野の中央部に位置し、日高山脈を背に、大自然の懐に抱かれたまちです。
基幹産業は農業。肥沃な大地と気候条件に恵まれ、小麦・てん菜・ばれいしょ・豆類・スイートコーンなどの畑作では、道内有数の生産量を誇っています。
ちょっと待ってください。ここで芽室町の紹介ですか?
それが仕事ですから
長くなりますよね?
WEBページだから平気ですよ
いえいえ、そろそろ終わりにしたいです。八所さんの目の輝きで「定住してよかった!これからも楽しい!」というのが感じ取れますから
ありがとうございます。そうであれば、最後に芽室町の概要や魅力を紹介している「めむろシティプロモーション」をご覧ください
めむろシティプロモーション
よろしければ、私が作った芽室町紹介動画も観てください!
移住ができたのは、これまでの仕事を生かせる町でしたが、八所さんのように、過去の経験を生かしながら、新たな仕事「まちづくり」を見つけて挑戦することで定住を決める人もいるんですね。ぜひ、皆さんも定住を見据えて、3年くらいの期間の移住を考えてはいかがでしょうか。
長い人生で3年はあっという間です。駄目なら戻ってやり直しだってできます。でも、大好きな移住先が見つかれば、自分の居場所(定住先)を良くしたいと誰よりも思うはず!今は、ちょこっとだけ移住を体験できるツアーやプログラムもあります。先ずは観光するのもいいでしょう。芽室に来る際は、ご連絡ください!楽しい・美味しい・おもしろいが待っているはずです
八所 かおり
出身地:大阪府枚方市(生まれは鹿児島)
職業:ナレーター・声優・MC、NPO法人副代表理事
趣味:一人旅、乗馬、スノーシューハイク、寺社鑑賞、美術鑑賞
出演ラジオ:JAGA「十勝魂778」内「MEMURO★Information!」、FM WING「Life in Tokachi / Qucurcusホームページ
牧場で働くなら、ノベルズでチャレンジ!
創業以来、北海道・十勝を拠点に、持続可能な農業経営を追求しているノベルズグループでは、現在、酪農牧場、肉牛牧場(肥育牧場、育成牧場)で正社員を募集しています。北海道内で12牧場、山形県(酒田市、最上町)で3牧場を経営しており、各牧場では異業種&移住転職を果たした仲間が、数多く活躍しています。業界未経験の方、移住先での仕事の選択肢を検討中の方は、気軽にご相談ください。「ノベルズウェーブ」ではそんな皆さんに役立つ情報を提供するほか、「ノベルズグループ採用サイト」では、現在募集中の求人情報を紹介していますので、併せてご参照ください。
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