地方移住を機に起業して成功する人が増えています。十勝の課題「空き家」を解決する夫婦をインタビュー
地方起業、移住起業がトレンドになりつつある昨今。「地方の課題」のいの一番に上がる「空き家の利活用」を手掛ける事業者さんも増えています。今回は、すでに先発優位が少ないなか、エッジの聞いたリノベーションを手掛ける夫妻をご紹介します。
◆宮城県仙台市出身
◆北海道小樽市出身
地の利のある東北ではなく十勝を選んだ理由とは
公益財団法人とかち財団の十勝における新たなビジネスにチャレンジする人材を育成する「令和3年度十勝人チャレンジ支援事業」で採択されたそうですね
はい。採択を受けて起業することができました
拓さんがJターン、舞さんがIターンですが十勝で起業したということは本当の意味で十勝人になるということですね
実は移住者という感覚がないので、改めて言われると新鮮です。
出身は宮城県仙台市と聞きました
宮城県仙台市で生まれ育ち、高校卒業後に北海道酪農学園(江別市)に入学しているので、かれこれ北海道には20年くらい縁があるんです。北の国から大好きで、自転車で全道を旅して回ったこともあります。趣味のひとつにスノーボードもあるので、雪山も得意です。焚き火マスターとしても活動するほどアウトドア派です
北海道十勝に向いているという話になりそうですが、あえてアウトドア話は次回にします
えっ!膨らませないんですか
すいません。大学卒業後は上京されたそうですね
本当に話を膨らませないのですね……。おっしゃる通り、大学卒業後は東京に本社を置く農業用機械メーカーに就職します。仙台出身ということもあり仙台営業所や同じ東北の秋田に転勤するなど、このまま東北を中心に終わるのかなと思っていました。ところが、転機が訪れるんです。
まさかの十勝帯広への転勤ですね
はい。当時の会社は農業王国十勝に拠点がなく、十勝の農業生産が右肩上がり成長するなか、いよいよ拠点を立ち上げようという気運が高まり、志願することで叶ったのが十勝です。
Jターン、Iターン夫婦が十勝で地方起業
そこまで感じる十勝の魅力を教えてください
十勝晴れです。札幌にも住んでいましたが、冬はいつも低気圧による雲に覆われ、毎日のように雪が降ります。幻想的な雪をイメージされる人もいますが、どんより雲がかかる天気は閉塞感を抱かせるんです。東北の秋田も同じでした。同じ冬なのに、十勝は毎日青空が広がりますよね。
十勝の冬は降水量が少なく、十勝晴れと呼ばれるほど晴天が続きますね
海外で感じる人も多いのですが、高く感じる青い空を眺めると「もしかしたら自分は、とても小さなことで悩んでいるのではないか」と思ったり、今まで抱えていた小さな悩みを忘れてしまうくらい広い空を見ることで、穏やかな気持ちになれるんです。まさに閉塞感ゼロです。
十勝の天気が本当に好きなんですね
子育てするには最高の場所だと思います
急に奥様、登場ですね
現在、住んでいる家はグリーンパークと呼ばれる1週1200mの芝生の公園も近いですし、グリーンパークの周辺は緑ヶ丘公園が近いので、運動したり、遊戯施設で遊んだり、芝生でピクニックのほか、美術館、歴史館、動物園も揃うので、休みの日は歩いて行っていますよ。他にも、十勝には手付かずの自然も残っているので、山や川、湖のほとりでキャンプ、カヌーとアウトドアを楽しめます。極め付けは、十勝に住む人は当たり前なのですが、自宅前や近くの公園で気軽にBBQができるんです。
焚き火マスターとしては腕がなりますね
ありがとうございます。自然の中での焚き火を通して、子どもたちにいろいろと伝えられています。焚き火を前にすると不思議と会話が弾むことってありませんか。炎を見ていると心が落ち着き、リラックスするからですね。十勝は空だけはじゃなく、どこまでも畑や道路が続く十勝平野の抜け間は、全国どこを探してもない景色も気に入っています。
農業王国で、農業を基軸に経済が成長し続けているので、住んでいる人たちも心に余裕があるというか、大らかな人が多いですね。
十勝には高層ビルも大型のショッピングモールもありませんが、ほどよい都市機能と自然が融合された、わたしたちにとっては最高の環境が整っています。
ベタ褒めですね
移住起業で選んだ空き家の利活用。強みは?差別化は?
冒頭でも話しましたが、Jターン、Iターンして数年経ちますが、実は自分達が「移住者」と思ったことってないんです。それくらい、自然と馴染んでいたんですね
起業=根付くのも自然の流れだったということですね
素敵な環境が整う十勝ですが、課題もあります。住んでいるうちに自然と課題が見えてきて、「自分の経験を生かせば解決できる」と思うようになったのも理由です
私が2級建築士の資格を持っている点と、空き家問題が重なったこともありますね
セールスや企画畑を歩んできたので、自ら営業して、相手の話を聞き出し、課題解決や商品・サービス素材をどうアウトプットするかまでを提案できるのも強みです。
それにアウトドアの知見を加えて、十勝ならでは気候や風土にあったリノベーションができるというわけですね
ご名答です。私がクライアントの課題を理解し、解決方法を導き出し、妻が具現化させるんです。本当の意味で施主に寄り添う住まいづくりができると確信しています
ちなみに「Pono Wolves」とはどういった意味なんですか?
私達は住まい・環境・⾷を軸に⼈と⼈との繋がりを⼤切にしたいと思っています。Ponoとは、ハワイ語で正しさ、本来の状態という意味が込められています。思いやり、優しさ、楽しさ、嬉しさ、喜び、尊重、応援、信頼、許すなどのポジティブな⾔葉や思想・⾏動のことを表す⾔葉です。そして、Wolvesとは狼の本来の姿は仲間や家族と共に行動し、互いを思いやる動物です。⼈と狼の親和性の⾼さからWolvesを社名に採⽤しました。
繋がりを大事に互いに思いやるという意味があるのですね。そうした想いに至るには何かきっかけがあったのでしょうか
2011年3月11日の東⽇本⼤震災の時に、私達は仙台に住んでいました。初めて命の危機を感じたこの⽇の経験は忘れることはありません。⻑時間の激しい揺れ、その後の季節外れの雪が舞っていた景⾊は10年経った今でも鮮明に覚えています。震災の経験は、私の人生観を変えました。⼈⽣はいつ終わるかわからないと痛感し、今までの価値観が崩れたんです。⽣き延びた命、これからは⾃分のやりたい事・⼈の為になる事をして⽣きていきたいと強く思う様になりました。
そうして、私達に出来る事は何かを常に⾃問⾃答をしながら生きてきました。そしてたどり着いた結果が大好きな北海道に戻り、⽣きていく事でした。
北海道十勝を選んだのは、そういった新たな人生観からなのですね。
私達は、仙台市・⼩樽市の出⾝で札幌市・江別市・福岡県・宮城県・秋⽥県を経て⼗勝に移住しました。暮らし始めた時の感動は6年経った今でも忘れません。十勝の魅力は語り尽くせません。⾃然、景観、⾷べ物、⼈など、全てが他の地域に無い魅⼒で溢れています。
しかし北海道(⼗勝)の⽅には当たり前の物(コト)でした。地元の⽅が気づいていない魅⼒を多くの⼈に知ってもらいたと考え起業に⾄りました。
どうして、ここまで北海道十勝が好きなのだろうと思っていましたが、話を聞き納得できました。お二人のなかで「十勝」という場所がとても大切なこともわかりました。
地方起業した夫婦が挑む2023年の目標は宿泊業
公益財団法人とかち財団の十勝における新たなビジネスにチャレンジする人材を育成する「令和3年度十勝人チャレンジ支援事業」に採択され、起業もできました。コロナ禍でしたが、起業しないという選択肢はありませんでした。
十勝に住み、多くの人の課題を聞いてきました。厳しい時期での立ち上げでしたが、多くの方々に声をかけていただき、また、新たな繋がりも広がっています。十勝に支えられている気がしますよ。
2023年は宿伯事業にも挑戦しようと思っています。自宅も空き家(店舗)をリノベーションしたんです。ぜひ、ご覧ください。
十勝の気候や風土にあった素材や色使いを基本にデザインしているので、お客様の脳裏にあるイメージを引き出すきっかけにもなりますよ。
家って「こんな感じ、あんな感じ」とイメージはできるのですが、それを言葉にするのは難しいですよね。だからモデルルームがあるのですが、どうしても画一的になりがちです。十勝には「とかちの住まい」があるはずです。
もう少し具体的にお聞きしてもいいですか
先ずは、絶景をテーマに⾮⽇常を体験することができる貸別荘宿泊事業を考えています。そこに十勝らしさを体現したサウナ・焚き⽕を基軸にプライベート空間で癒しと豊さを提供します。世界は、新型コロナと共存する道を進んでいきます。
⾮接触型の宿泊事業運営を展開する選択肢は必然だと思っています。そこに、弊社の強みであるアウトドアと建築を掛けわせることで、⾮接触型でありながら、十勝らしいアクティビティを楽しめる宿泊事業を運営していこうと思っています。私たちは、2人が経験してきたすべてを混ぜ合わせたマーブル模様のような事業を立ち上げていきたいと思っています。
ありがとうございます。十勝だけを知る人よりも、多くの経験を積みながら、十勝以外を知るお二人だからこそ、だれよりも十勝の良さを知ることができたんですね。空き家問題は待ったなしです。お二人の力で十勝らしい新たな居場所(リノベーション)が増えることを期待しています。
加藤 拓|TAKU KATO
Pono Wolves株式会社|代表取締役
宮城県仙台市出身。酪農学園大学環境システム学部地域環境学科卒業。建設資材商社で農業機械メーカー営業。江別市・福岡県・札幌市・仙台市・秋田市を経て十勝へ移住。焚火マスターとして活動。火と木をこよなく愛し、薪ストーブの前でブッシュクラフトをする日常。家族全員サウナ―。全国のサウナ施設に行っている
加藤 舞|MAI KATO
Pono Wolves株式会社|専務取締役
北海道小樽市出身。建築会社・設計事務所にて住宅、店舗設計、アパレル業界にて流通や接客、コーヒーショップにてコーヒーの知識を得る。札幌市・仙台市・秋田市を経て十勝へ移住。二級建築士として暮らしやすさとデザイン性を重視した空間づくりを提案している。 コーヒーと古道具・家具をこよなく愛し、毎日ハンドドリップでコーヒーを淹れて飲んでいる
牧場で働くなら、ノベルズでチャレンジ!
創業以来、北海道・十勝を拠点に、持続可能な農業経営を追求しているノベルズグループでは、現在、酪農牧場、肉牛牧場(肥育牧場、育成牧場)で正社員を募集しています。北海道内で12牧場、山形県(酒田市、最上町)で3牧場を経営しており、各牧場では異業種&移住転職を果たした仲間が、数多く活躍しています。業界未経験の方、移住先での仕事の選択肢を検討中の方は、気軽にご相談ください。「ノベルズウェーブ」ではそんな皆さんに役立つ情報を提供するほか、「ノベルズグループ採用サイト」では、現在募集中の求人情報を紹介していますので、併せてご参照ください。
ノベルズの採用情報へ