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牧場の陰の仕事人!牛の蹄を整える『削蹄』の仕事について徹底解説します!
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公開日:2023年3月28日

牧場の陰の仕事人!牛の蹄を整える『削蹄』の仕事について徹底解説します!

みなさん、牧場の牛を管理する仕事で、『削蹄』という作業を聞いたことはありますか?
おそらくほとんどの人が聞いたことはないと思います。『削蹄』とは牛の蹄を切り揃え、整える作業のことを指します。人間に置き換えると『爪切り』です。皆さんも少なくとも1ヶ月に1回は必ず爪を切っていると思いますが、実は牛も削蹄という作業で、爪を整えているのです。今回は、牧場で欠かせない業務『削蹄』のお仕事に迫ります!

目次

削蹄作業とは

削蹄作業とは、牛の蹄(ひづめ)を切り揃え、整える作業のことを指します。人間も爪が伸びてしまったら、巻爪になってしまったり、欠けてしまうことがありますが、牛もそれは同じです。長くなった蹄をそのままにして、足が痛くなり、歩けなくなってしまっては大変ですよね。牛の健康状態を維持するためには、定期的に削蹄を実施することが必要なのです。

自然界の野生動物は、日々の運動や立ち上がりの回数によって自然に磨耗していきます。よってそもそも削蹄をする必要がありません。ですが、家畜として飼養されている牛は、基本的には牛舎内で飼われています。単純に移動距離が少なく、足を使っていないので、蹄がすり減らず、伸び切ってしまうのです。逆に言えば、放牧で外に放し飼いをしている牧場では、削蹄を実施していないところもあります。

削蹄を定期的に行っていても、処置が不十分な場合は蹄が伸びすぎて歩行に支障をきたしたり、蹄の中に異物が入り込んだりすることがあります。そのため、削蹄作業は想像以上に専門的な仕事であり、プロとして認められるのも時間がかかります。

ある削蹄師さんにお話をうかがったところ、日本装削蹄協会の定める「1級認定牛削蹄師」の資格を取得するまで5年の歳月がかかり、さらにその後10年かけ、最上級である「指導級認定牛削蹄師」を取得したそうです。
一般の方々にはあまり知られていないニッチな職業ではありますが、その姿はまさに『職人』と呼ぶにふさわしいでしょう。

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削蹄師は、牛の健康をまもる職人です。

牛の蹄ですが、実は、業界では「第二の心臓」と呼ばれるほど、重要な役割を担っているとされています。その理由は、牛は大地を走るのに適する身体を作るために、蹄の伸縮を利用して、血液循環を身体の中で促進させているからです。つまりは、牛の蹄の健全性が損なわれると、血液がうまく循環されないので、健康状態にも大きな影響を及ぼします。

また、逆に内蔵の病気により、炎症系物質が血液中に流れ出ている際も、まず蹄に影響が出てきます。蹄の状態が問題ないのに、歩様がおかしい場合や、座りっぱなしの状態が続く場合は、内蔵のどこかで炎症が起きているのではないかと予測することもできます。削蹄師はこれらの情報を総合的に判断して、畜主に牛の健康に関してアドバイスをすることも珍しくありません。

蹄の病気をその名の通り「蹄病」と私たちは呼んでいます。一度蹄病に罹ると、完治するまでは長い時間がかかります。それは肥育牛においては、体重減少、乳牛においては、生乳生産量減少を意味し、牧場の生産性を悪化させる大きな要因の一つです。 蹄病でよくある症状としては、こちらの3種類があるかと思います。「趾皮膚炎(DD)・蹄底潰瘍由来・白帯病」で、どれも厄介な病気です。

■趾皮膚炎(DD)
感染症由来の蹄病の一つで、人間で言えば、水虫みたいなイメージです。トレポネーマという病原体が皮膚に深く入り込むことで発症します。一頭の個体が罹ってしまうとすぐに他の個体にも感染してしまうので、非常に厄介です。

■蹄底潰瘍
限局性の皮膚炎で、後ろ足の外側の蹄に多く発症します。500~600kgのも生体重(肥育牛なら最大1000kg程度)を支える際に、蹄に負荷がかかってしまうために引き起こされることが多いです。放牧のように土の上であれば、重さは吸収されていきますが、牛舎のようにコンクリートの上での生活だと、どうしても足に負荷はかかりやすいです。牛床をどれだけ厚く敷いてあげられるかも重要な予防策となっています。

■白帯病
蹄の角質疾患の一つです。白帯とは、蹄底の角質と蹄壁の角質が接着している接合組織のことです。つなぎ目の部分なので、弱く脆いです。この脆い白帯に負荷がかかり、傷や亀裂が入ると、その中に細菌が入り込み、蹄全体がボロボロになっていきます。蹄底潰瘍などと複合的に生じることが多いのも特徴です。

これらの蹄病を防ぐためには、牛舎の管理者は、削蹄作業を含めた適切な健康管理を行うことで、牛の健康を維持し、牛たちが快適に過ごせる環境を整えることが求められます。
普段から汚くなった牛床をしっかりと綺麗な牛床に取り替えているか、その厚さは適切か。水分量が多く細菌が発生しやすい環境になっていないかなど、気をつけるべきポイントはたくさんあるので、削蹄師さんや獣医師さんと意見を交換しながら、適切な使用管理を心がけていきましょう。

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どのように削蹄しているのか?

では、そんな職人がどのようにして削蹄作業を行っているのか、具体的に説明していきましょう。

前提として、単純な爪切りだと思っていては間違いです。人の爪もそれぞれ形が違うとの同じで、牛も個体によって蹄の形は様々です。その牛の体つき、バランス感覚、蹄の形、歩き方など総合的に判断をして、その牛にはどのような蹄が一番適しているのかを瞬時に判断をして整えていく作業が必要です。内蹄と外蹄の角度を 50~52 度程度にそろえたり、バランスを保つために土踏まずを作ったり、頭をフル回転させて、作業は行わなければなりません。

具体的な削蹄手順ですが、大きく分けて2種類あります。

1つ目は人力で牛の足を持ち上げて、爪を切るやり方です。
もっと具体的に説明すると、牛の頭を保定させた後、足を一本ずつ持ち上げて、削蹄鎌で切りそろえる方法です。ある種、無理やり牛の足を持ち上げるので、力と力の比べ合いです。牛も暴れて、地面に足をつけたがるので、どのように抑えて、かつ上手にコミュニケーションの取りながら、バランスを保っていくかが重要です。この手法を行う削蹄師さんは少なくなっていますが、削蹄枠(機械)に入り切らない大きな牛は、今でもこのように人力で削蹄を行うことがあるそうです。

2つ目は削蹄枠(機械)を使った削蹄です。
牛一頭を丸々削蹄枠の中に入れて、500~600kg(乳牛)の生体を機械が持ち上げた後、ぶら下がった足を固定して、剪鉗やグラインダーで整えていきます。ですが、機械があるからといって楽ができるわけではありません。実際に削蹄師さんにお話を伺ったところ、このような答えが返ってきました。

「機械を使って効率が良くなった分、沢山の牛の削蹄を求められます。2~3kgもあるグラインダーを持って1日に何十頭も蹄を整える作業は、本当に集中力が試されますね。」ノベルズグループのようなギガファームだと、1日に100~200頭ほどの牛を削蹄するそうです。本当に忍耐力が試される大変なお仕事です。

いかがでしたか。今回は牧場運営の陰の率役者、『削蹄』の業務についてご紹介をしていきました。牧場には、餌やりや牛舎の掃除やミルクやりだけではなく、今回の削蹄のように、一般の方からすると、あまり目立たないお仕事も沢山あります。ですが、その仕事も牧場の生産性をあげるため、ひいては牛にとってより良い環境で過ごしてもらうためには本当に必要な仕事です。

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