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いま話題の放牧酪農!トレンドの背景と実現までの手順について調べてみた
酪農を知る
公開日:2022年10月31日

いま話題の放牧酪農!トレンドの背景と実現までの手順について調べてみた

酪農といえば、青空の下、牛さんが広大な牧草地の中でのんびりと過ごしているようなイメージを描いている方が多いのではないでしょうか。しかし、日本の酪農家の中で放牧をしている割合は全体の半分以下なんです。ハイジのような世界の酪農をしている農家さんは少ないんですね。今回は日本の放牧酪農の実態とその背景について語っていきます。

目次

酪農にも色んな飼育方法があります

酪農と言っても色々な牛の飼養方法があります。土地をうまく活用した放牧はもちろん、少ない土地で効率よく飼育する舎飼いなど経営者と周りの環境によって、そのあり方は様々です。まずは、日本の酪農家がどのような飼育方法を行っているかを見ていきましょう。

放牧酪農

みなさんがイメージしやすい酪農といえばこちらではないでしょうか。いわゆるハイジの世界です。広い牧草地に放し飼いされた牛さんがのんびり草を食べ、生活しています。
昼夜を問わず、放牧しているところもあれば、昼間だけ放牧させて、夕方になるとペーターのような牛飼いさんが、連れ戻しにくるというところもあり、管理のしやすいように放牧時間帯をきめているみたいです。

日本では、北海道はもちろん九州の阿蘇地域東北地方での山岳酪農が有名で、土地が潤沢な地域で採用されています。確かに都心で放牧をしようと思っても、なかなかそんな土地がすぐには見つかりそうもないですよね。

一般の人でも目に付きやすいことから、放牧は酪農の主軸と思われがちですが、実は全体の20%ほどしか放牧はしておらず、ほとんどの酪農家は下記の飼育方法を採用しています。

完全牛舎飼い

業界では舎飼いと呼ばれていて、牛さんの生活が、牛舎の中で完結する飼育方法です。放牧のように放し飼いではないので、スタッフの目が届きやすく非常に管理がしやすいことが特徴です。ただ、牧場の規模によって舎飼いも色々あり、主にストールバーン(繋ぎ飼い牛舎)とフルーストールバーンの2つに分かれています。

◆繋ぎ飼い牛舎
スタンチョンや、チェーン、ロープなどで牛をつなぎ止めて飼育する牛舎で、日本の大部分の酪農家がこの方法を採用しています。

特徴としては、一頭一頭の牛に目が行き届き、健康状態などが良く観察できる利点があります。しかし、飼養頭数が多い牧場だと、牛の繋ぎ止めに非常に労力がかかってしまうので小規模酪農家で採用されていることが多いです。1牧場で50頭くらいの搾乳牛を飼育するのが限界だと言われています。

また、牛は牛舎と繋がれて自由に動くことができないので、ストレスは他の飼育方法よりも多くなってしまいます。管理者は、どのように生乳生産量や生乳の質を下げないようにコントロールをしていくかが鍵になっていきます。

◆フリーストールバーン
こちらはストールバーンとは異なり、牛を繋ぎとめる設備はありません。牛が自由に牛舎の中を移動でき、繋ぎ飼いや放牧と比べると同じ面積で多くの頭数を管理できることが特徴です。また、設備が少ない分、建設費が安価で済むだけでなく、牛床替えの際に大きなショベルを使用して一気に掃除を行えるなど、作業面でも効率を図ることができる点がメリットとして挙げられます。

デメリットとしては、牛が自由に移動するので、個体ごとに管理することが難しいことや、個体同士の喧嘩が起こって、ボス牛が弱い牛をいじめてしまうこともあるそうです。そういったいじめや病気などを摘発できるように、牧場スタッフの状況判断能力もとても大事になってきます。

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新たに放牧酪農が注目される理由

酪農に様々な飼養管理の方法があることを示してきましたが、昨今、日本の酪農業界では少数派だった放牧酪農に力を入れている酪農家さんの割合が増えているそうです。それには一体どのような背景があるのでしょうか。

日本の酪農の大規模化傾向

日本の酪農業界は現在、大規模化の真っ只中です。これまでの日本は、家族経営で1戸あたり50頭ほどの飼育頭数で経営を行っていたのですが、国の方針や酪農事業(第一次産業)の人材不足に伴って1戸あたりの頭数を増やし、大型の重機や施設を使うことによってより効率を意識した経営に変化しています。

しかし、いくら大規模で効率よく経営すると言っても、舎飼いだと限界があります。結局頭数が増えると同時に、牛舎や搾乳設備の数は増やしていく必要もありますし、まだまだ全自動で管理できるシステムが整っていない現状では、結局人も雇用する必要があります。

そこで放牧酪農に注目が集まっているわけです。放牧酪農の最大のメリットは人とお金をかけずに運営できることです。

例えば、まず餌やりが必要なくなります。放牧されている牛は放牧場に生えている牧草を食べ、飼料コストが軽減できます。そして放牧中に牛は糞尿をするので牛舎の清掃が簡単に済みます。また、放牧牛は舎飼いの牛に比べ長生きする傾向もあるため、病気や治療コストの軽減と牛1頭の一生当たりの生乳生産量は舎飼いよりも増えます。

今までの日本は舎飼いをすることによって、一時的な乳量の増加を図ってきました。また、配合飼料をたくさん食べさせて栄養価が高い生乳を生産することで効率の良い生産をできていると考えていました。ですが長期間での生乳生産量を参照した場合や、大規模酪農を実施するにあたって舎飼いと放牧を比較した時に、放牧酪農のほうが、メリットが大きいと言われるようになってきました。

日本の放棄地の活用

また、もう一つ放牧酪農が注目されている背景があります。それは日本の耕作放棄地を有効活用できると考えられているからです。

みなさんは日本の耕作放棄地が年々増加していることをご存知でしょうか?

農家の後継ぎ不足高齢化による離農が激しくなっていることもありますが、山間地域に多い耕作放棄地は、大型機械も入りづらく収量も見込めないという背景もあり、その面積は増え続けています。この放棄地をそのままの状態にしておくと、様々な問題が起こります。

第一に、放棄地が野生動物のすみかとなり人間が住む人里へ降りて、獣害や鳥害の被害に合う可能性が高まります。また、適切な管理が施されていないと、景観の悪化や土砂崩れ等の災害の危険性が高まることも懸念されています。

この狭い日本で土地が有効に扱われておらず、対応が間に合っていない状況なのです。

そんな課題を解決するべく、この耕作放棄地を畜産の放牧場へ転換する動きが見られています。酪農家さんのYさんは、使われなくなった山林を開拓し、牧場を作ったことで、耕作放棄地の有効活用を実現しました。「牧場があることによって、使われていなかったものが再利用されるだけでなく、牧場に人が集まって人間関係が構築され、新たなものが生まれていく様子を目の当たりにした」と喜びの声を語っています。

このように低コスト省力化、耕作放棄地等の再生利用等を推進するため、国としても肉用牛放牧や放牧酪農の取組を推進して、普及を目指しています。

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放牧をするのも楽じゃない。越えないといけないハードルはある。

現在の日本で放牧酪農は、大規模化によるコスト省力化や耕作放棄地の有効活用など様々なメリットがあることがわかりました。しかし、放牧と言ってもただ牛を野原に放つだけはダメです。放牧酪農を始めるに当たって、準備と継続的な管理もやはり必要なのです。

放牧場の整地

まず、放牧する土地を確保したら、まずは整地することから始めましょう。やり方は様々あると思いますが、一般的には電動草刈機や鋤などを用意して、ひたすら雑草や木を伐採していきます。私の知人で2haほどの中山間地域を開墾した人がいましたが、その人は地道に半年間かけて自力で草木を切っていました。また、木には根っこが地中深くまで張り巡らされているので、それ鍬や重機で掘って、取り除いていました。こちらはかなり根気を要する作業になっているので、計画性を持って、そしてなりよりも楽しんで、少しづつ作業することが必要です。

ちなみに、放牧地の面積は草の量にもよりますが、牛1頭当たり30a~40a程度です。

電気柵の設置

続いては電気柵の設置です。放牧場には牛が逃げないよう牧柵という囲いが必要で、一昔前までは木や鉄製の杭を打ち込み有刺鉄線を張っていました。しかし、一定の手間と労力が必要なうえ、一度設置すると簡単に場所を移動できません。そこで、最近では牧柵を簡単に設置でき移動も可能な「電気牧柵」を用いています。

ただ、ここでは牛に対しての調教が少し必要です。牛は好奇心旺盛な生き物なので、初めて見るものに鼻で触ろうとします。その時にいきなり電気がビリッときたら、暴れて暴走したり、柵を壊してしまう可能性があるのです。そのような事にならないように、放牧する前に電気牧柵に慣れさせることが必要です。

放牧後の管理

整地もできて、電気柵も設置して放牧の準備はこれでばっちりです。後は、放牧後の管理もしっかりすれば放牧酪農牧場の完成です。放牧後の一番の課題は、やはり個体ごとの体調管理でしょう。ただでさえ広い土地に放たれている牛さんを目を離さず管理することは難しいので、搾乳時に牛舎へ戻ってきた時に、牛の歩き方や顔つきをしっかり観察して異常がないか判断することが大切です。放牧中に多い怪我は足の捻挫など足回りが多いです。疾病でいうと放牧場に生えているワラビなどの中毒性の植物を食べ、下痢を起こしてしまうことがあるので、放牧場に落ちている糞尿の状態もきちんと確認しましょう。

また、牧草などの餌管理も重要です。餌が少なくなると牛は痩せていくのはもちろん、さらなる餌を求めて、脱柵する危険度が高まります。そうなる前に、栄養素で足りない分は追加で配合飼料を与えたり、転牧をして新しい放牧場へ牛を移したりすることが必要になってきます。

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いかがでしたでしょうか。最近の酪農は放牧に注目が集まっていますが、その背景には事業の大規模化と耕作放棄地の増加といった社会問題が絡んでいることがよくわかりましたね。

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