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日本の畜産の歴史と未来を畜産企業経験者が語ります…!
酪農を知る
公開日:2022年12月5日

日本の畜産の歴史と未来を畜産企業経験者が語ります…!

今回は酪農というカテゴリーを少し超えて、畜産のお話をしたいと思います。皆さんは日本の畜産業と聞いて、何を思い浮かべますか?和牛?地鶏?でしょうか?どれも日本が誇る有名な畜産物ですよね。日本には四季もあり、様々な動物が存在する多様性が豊かな国の一つです。そんな日本で独特に発達した畜産業を皆さんに説明していきたいと思います!

目次

日本の畜産の歴史

まずは、日本の畜産の歴史についてお話していきましょう。

現在の畜産の基盤を築いたのは第二次世界大戦が開けた後、1945年以降の急激な文化改革から始まります。

今までの日本の閉鎖された政治体系から、アメリカナイズされた文化が一気に流入。GHQの指導の元、食文化も改革の対象とされ、アメリカで生産された余剰小麦や乳製品が日本に流れ込み、給食にもパンが導入されたのは1950年頃の話となります。

そんな中、肉や卵の消費量もだんだんと増加傾向になってきました。

1960年代では一人あたりの消費量は年間で約1kgでしたが、食生活の変化とともに10年で2倍、20年で3倍、30年で5倍と増えていき、日本の食卓にお肉が並ぶのが当たり前の時代へと変化をしてきます。

その変化の波とともに生産面では昭和35年度の時点で、国内消費のほぼすべてを国産で賄っていましたが、その後、消費量の増加に追いつけず、現在は不足分を輸入の増加で補っているような状況です。令和元年度の牛肉の自給率は35%(重量ベース)で、国産が国内需要の3分の1しか満たしていないような状況があります。

こちらの問題に関しては、別の記事でも詳しく説明しているのでこちらも参考にしてみてください。

酪農牧場の牛は何を食べているのか?気になるエサ事情について徹底解説!

日本の南端と北端で畜産が発展した理由とは?

日本の歴史を紐解いていく中で、第二次世界大戦後に急激に肉や乳製品への需要が高まったことがわかりましたね。その需要に応えるため、日本の中でも畜産を盛んに行っている都道府県は存在します。下記の表とグラフをご覧ください。

日本の畜産産出額ランキングトップ3は北海道、鹿児島、宮崎で、日本の南端と北端ですね。この3道県で日本の畜産産出額の約半分を占めており、各家畜の飼養頭数割合でも上位に入っていることがわかると思います。同じ畜産でありながらどうしてこんなにも距離が離れた場所で盛んになっているのでしょうか。そこには畜産をする上で地理的に大きなメリットがあったからだと考えられます。

九州地方で畜産を行うメリット

◆土壌が畑作や畜産向きであること

九州は世界で知られる温泉地帯として有名です。そして温泉があるということは火山があるということ。火山が地下水を温めて温泉が湧き出しているのですね。ですが、それだけではありません。火山は土壌にも影響を及ぼします。

九州地方の土壌は火山灰質の地域が多いということが挙げられます。特に九州南部にはシラス台地と呼ばれる火山噴出物からなる台地が多く、鹿児島県本土の約50%、宮崎県の15%を占めています。こちらの土壌は水分を多く含むと、強度が低下しバリバリに土壌が割れてしまうので、水田のような常時水が浸っている作物生産には不向きです。その性質上、昔から九州南部では畑作がメインの作物産業になりました。

そして畑作で育てられたサトウキビやさつまいもやでんぷんは、加工する際に副産物として絞り粕などが出てきます。実はこちらの絞り粕は牛や豚の濃厚飼料や配合飼料としての用途があります。食品を余すところなく使う日本人の「もったいない」精神が畑作だけでなく、畜産も発展させてきたといえるでしょう。

ちなみに畜産の中でも九州が有名なのは、鹿児島黒牛や黒豚、宮崎地鶏など、乳牛以外の畜産業が盛んに行われています。

北海道で畜産を行うメリット

北海道は先ほどのグラフでも示されていたように、酪農が盛んに行われています。生乳生産量の割合は全国の50%を占め「酪農大国」とも呼ばれています。そんな大国北海道で、畜産が盛んになった理由とは一体どういった理由があるのでしょうか?

◆やはり最大のメリットは土地の広さ

こちらは皆さんもおおよそ理解されていると思います。具体的なメリットは、牧草地が広く、放牧に向いているということです。北海道の酪農牧場の経営内放牧の割合は令和2年の結果だと、約35%の牧場が放牧を行っております。一方都府県の牧場に至っては、2%の割合でしか経営内放牧を行っておりません。北海道の圧倒的な土地の広さを使って放牧をするという牧場形態を可能にしているのです。

また、広い土地は家畜の餌の生産も同時に行うことができます。特に牛の餌になると一日に約30kgもの餌を食べ、豚や鶏の採食量とは比べ物になりません。そんな大量の餌を確保するためには、やはり広い土地を有効活用する必要があります。牛さんも地産地消を行っているんです。

◆北海道の気候は家畜にとって最適!

家畜の飼育において一番気をつけておかなければならないのは、暑さによる夏バテです。

実は鶏も豚も牛も暑さには弱い生き物で、例えば豚は気温25℃を上回る状況だと繁殖成績が低下することがわかっています。牛も気温が25℃以上になると乳量の減少や入室の低下などを引き起こし、ひどい時は熱中症を起こして急死してしまうこともあるのです。

北海道の夏は人間にとって過ごしやすい気候ですよね。家畜にとってもそれは同じで、自由に服を着たり、住む場所を選ぶことのできない家畜に対して、過ごしやすい環境は生育にも良い影響を与えます。

では、逆に寒さはどうなのでしょう?

「北海道の冬の極寒は家畜に悪影響を与えないのか」という意見が飛んできそうですが、実は家畜は暑さよりも寒さに強い生き物です。ノベルズウェーヴ編集部もグループの牧場に足を運ぶことは多々ありますが、冬になると牛は冬毛に生え変わりモコモコの毛皮を纏うようになります。とても羨ましいですね笑

-20℃の中でも、放牧している牧場では雪の中を闊歩している姿も見ることができます。
また、生き物は食べ物を食べると体の中で消化をし、熱を発生させます。家畜も同様で、自分の体の熱を維持するために飼料の摂取量を上げて、体温を上げる努力をしているのです。ノベルズグループの肥育牧場ですと、夏と冬で飼料摂取量は2~3kgほど違ってきます。

生き物は、熱を発生させることはできますが、下げることができません。その体の仕組みが北海道で畜産を盛んにさせた要因の一つであると言えそうです。

日本の畜産が世界に羽ばたいている?

日本の畜産業界で生産が盛んな地域が、日本の南端と北端であるという事実がとても面白いですね。ですが、その理由はとても妥当なもので、土地の性質や広さ、そして気候を活かした結果であるということがわかりました。

そんな日本の畜産物が世界へ輸出されているみたいです。

実は、農林水産省の調査によると、2012年から畜産物の輸出金額は伸び続けており、2020年には600億円まで実績を上げております。

その中で、特に今日本が推し進めている輸出政策が和牛ブランドです。皆さんもテレビやYou Tubeで日本の和牛が世界各国のスーパーに並んでいたり、日本料理店で調理されているところを見た人も多いのではないでしょうか?この姿を見ると、どうしても「日本の和牛」は世界で確固たる地位を確立しているんだと思ってしまいますよね。ですが、現実はそう甘くはありません。

実は、和牛ブランドの認知度は「日本の和牛」というよりも、「Kobe Beef(日本でいう神戸牛)」の認知度の方が高く、和牛全体の認知度というのは決して高くはありませんでした。また、豪州産の「Wagyu」ブランドに押し負けていた背景も重なって、本当は豪州で育てられた牛肉が日本産と勘違いされてしまうという、非常にねじれた理解が広がっていると言われております。

ノベルズの和牛ブランド「玆」

実際にある消費者データでは、豪州産Wagyuが日本で育成されたと勘違いしている割合はどの国の調査であろうと約50%にも及ぶという結果が出ております。とても複雑ですね。

しかし、そんな中で、和牛ブランドを推し進める追い風がようやく吹いてきます。それは新型コロナと円安です。日本全体にとってはあまり良い影響を及ぼしたとは言えないかもしれませんが、実は和牛ブランドの発展を進める上で大きな力になりました。

具体的に言えば、新型コロナウイルスの影響で発展したインターネット販売の拡充と、円安による輸出のメリットです。これにより海外(特に米国)での輸出量が拡大。2020年と2021年の和牛輸出量と和牛輸出金額は約2倍に跳ね上がりました。

従来、和牛は主に高級飲食店で取り扱われていましたが、新型コロナ禍の中で消費者の生活様式の変化が生じ、図らずも和牛の認知度と購買欲の向上に一役買っているという状況になりました。

また、米国やヨーロッパといった地域だけでなく、東南アジアへの輸出も最近は拡大を進めていて、これまでの『和牛=神戸牛』という認識から、『日本にはさまざまな地域に和牛がある』といった認識に変わってきていると言われています。

いかがでしたでしょうか?

今回は日本の畜産の歴史と地理と未来について解説していきました。

食料自給率の問題などまだまだ課題はたくさんありますが、一歩ずつ改善をしていき、今後、日本の未来を担う産業として発展していくことを目標に日々現場作業に務めていきます。
皆さんもどうぞ応援のほどよろしくお願いいたします!

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創業以来、北海道・十勝を拠点に、持続可能な農業経営を追求しているノベルズグループでは、現在、酪農牧場、肉牛牧場(肥育牧場、育成牧場)で正社員を募集しています。北海道内で12牧場、山形県(酒田市、最上町)で3牧場を経営しており、各牧場では異業種&移住転職を果たした仲間が、数多く活躍しています。業界未経験の方、移住先での仕事の選択肢を検討中の方は、気軽にご相談ください。「ノベルズウェーブ」ではそんな皆さんに役立つ情報を提供するほか、「ノベルズグループ採用サイト」では、現在募集中の求人情報を紹介していますので、併せてご参照ください。

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