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酪農牧場の牛は何を食べているのか?気になるエサ事情について徹底解説!
酪農を知る
公開日:2022年10月17日

酪農牧場の牛は何を食べているのか?気になるエサ事情について徹底解説!

酪農牧場の仕事で、毎日欠かせないのが「エサやり」です。牛さんは、エサの種類や混ぜ合わせにもよりますが、毎日30kg程度のエサを食べます。その栄養素が直に生乳の質や量につながっていくので、エサやり作業の良し悪しで、牧場の経営状況も左右してしまうほど重要な業務なんです。今回は、牧場経営の生命線とも呼べる「エサ」についてフォーカスしたいと思います。

目次

牛のエサは大きく分けて2種類

牛のエサは大きく、「粗飼料」と「濃厚飼料(配合飼料)」の2種類に分けられます。この2つのエサは、栄養価も見た目も全く異なっているほか、飼料の中身も細かく分かれています。牧場経営者が自分の牧場の牛がどんなふうに育ってほしいかを考えた上で、エサの配合を考え、2つのエサを作り上げるんです。

粗飼料

粗飼料(そしりょう)とは、草あるいは草をもとに作られたエサのことを指します。例えば、牧草やワラ、乾草(牧草を乾かしたもの)、ほかにサイレージという草を乳酸発酵させたエサなどです。

人間で例えるならば「主食」です。人間でも、その中に白米やパスタやパンがあるように、牛にも主食のなかにたくさんの種類があるわけです。

粗飼料は、草が原料になるので繊維質が多く含まれています。専門用語で、エサ内の総繊維を示す項目として「NDF」と呼ばれており、この成分が変化すると、乳量や乳脂肪分、無脂固形分率に変化が生じてきます。

また、牛は反芻動物で、一度胃の中に入れた食物をもう一度口の中に戻し、再度噛み砕いてまた胃の中に戻して少しずつ食べたものを消化していく生き物です。反芻の回数が多いほど、よく餌を消化でき、リラックスしていると言われています。

与える粗飼料の長さによって反芻の回数が異なってきますので、与える草は短すぎても、長すぎてもいけません。その微妙な塩梅を調整するのも難しいところですね。


配合飼料

とうもろこしや大豆、麦やふすま(小麦を製麦したときに出る皮や糠)、糠(ぬか。米ぬかなど)などを粉末状にしたり、圧ぺん(あっぺん。蒸気をかけて潰して外殻を割ること)加工したものです。

牛にとっての主菜(おかず)です。デントコーンのような牛専用の飼料作物もありますが、多くは食品加工の副産物として出てくるものが牛の配合飼料になっています。

粗飼料と違って、タンパク質や炭水化物の含有量が多いことが特徴です。タンパク質は筋肉の発達を促し、炭水化物はエネルギーや脂肪になります。配合飼料を与えることで、生乳の分泌を促進したり、また、栄養素でいうと油脂分が多い生乳がでます。

ただし、配合飼料を与えすぎてもいけません。人間でいうとメタボリックな体になってしまうので、そうならないように餌やりの段階で調整するのも酪農家の大事な仕事です。

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エサの与え方にも違いがある

先ほどは粗飼料と配合飼料の2つの餌があることを説明しましたが、その他にも餌の話でTMRという言葉を聞いたことがある人がいるかも知れません。TMRも牛の餌の一つではありますが、どちらかといえば餌の種類ではなく、給餌方法のお話になります。給餌方法も各酪農家さんで異なる方法をとっています。

分離給餌

分離給餌と呼ばれる方法があります。これは粗飼料と配合飼料を別々に給餌することを指します。昔から各牧場で行われてきた方法で、中小規模の農家さんは今でもこの方法で行っているところは多いです。

メリットとしては、牛がどの飼料をどのくらい食べたのかを把握できることです。それによって、食べた量を確認することで、牛の生乳生産量の予想がつくそうです。また採食量が減ったりすると病気のサインとして捉えることもできます。

デメリットとしては、給餌の時間帯を調節する必要があり、工数と手間がかかるということです。牛は配合飼料(おかず)を好んで食べるので、配合飼料と粗飼料を同じ時間帯に与えると配合飼料ばかりを食べ、栄養が偏ったり、人間でいう胸焼けの症状を起こしたりします。

上手に給餌の時間帯を分け、バランスよくエサを食べてもらえるような工夫が必要です。

TMR法

次にTMR法と呼ばれる給餌方法を説明します。TMRとは「Total Mixed Ration」の略で、「完全飼料」「混合飼料」とも呼ばれています。ざっくり言えば粗飼料と配合飼料の混ぜご飯のことです。炊き込みご飯を想像してください。この料理は主食の米とおかずの鶏肉や野菜などを混ぜこんで炊くものですが、TMRもそういうイメージです。

メリットとしては、TMR一つで栄養バランスが考えられているので、牛の消化器官への影響が少ないことが挙げられます。それによって効率よく栄養を取り組むことができ一定の生乳の質と生産量を維持することができます。

また、分離給餌のように時間帯に応じて給餌をするのではなく、食事の時間帯を決めないで、いつでも好きな時に食べたいだけ食べられるようにする給餌方法(不断給餌)を行えることも大きなメリットです。この方法は一日一回の給餌で良いので、非常に省力的で酪農家さんの負担も少なくなります。

デメリットとしては、大掛かりな機械や設備が必要なことです。やはり飼料を混ぜ込むのは人の力ではなかなか困難です。粗飼料を細かく切り刻む必要があったり、粉末状の重い配合飼料をムラなく全体を混ぜ込んだりするのは至難の技です。こういった仕事は機械に任せたいところですが、小規模な農家さんではなかなか設備投資をする余裕がなく難しいところです。

とはいえ、そんな中小規模農家さんの悩みを解決するために「TMRセンター」という施設が全国に存在します。TMRを作り、各農家のエサをまとめて作成して供給する専用施設のことで、利用している酪農家さんは、牛の個体管理や搾乳に専念することができるという仕組みです。

TMRセンターのおかげで労働時間や初期投資の削減につながっています。また、新規酪農家さんにとっては、餌作りのノウハウが無くてもTMRセンターに任せることで、他の酪農家さんと同じ餌管理を行うことができ、非常にメリットが大きいです。

デメリットとしては、餌が各酪農家で同じなので、生乳生産量や生乳の質に関して違いが生まれにくく、自分の思い通りの管理ができない可能性があることでしょうか。

いずれにせよ、自分たちがどんな飼養管理を行って、どのような生産や経営を行っていきたいのか、それによっても利用の有無は決まってきそうです。

話が脱線してしまいましたが、給餌の仕方にも2種類存在し、それぞれメリットデメリットがあることが理解できたかと思います。

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日本の飼料自給率は厳しい状況にある。

これまで、牛さんの食べるエサの種類とその給餌方法について説明してきました。

酪農家の経営方針や規模によってそのあり方は違ってくることが理解できたかと思います。ただし、いまの酪農業界は業界全体として、大きなフィールドで解決しなくてはいけない問題もあります。それは日本の飼料自給率の問題です。

現在、日本の食料生産の課題として食料自給率の低値が挙げられていますが、実は家畜が食べる飼料の自給率、「飼料自給率」を反映すると、更に食料自給率は下がってきます。農林水産省の令和3年度食料自給率の資料によると、牛肉の食料国産率において、輸入牛肉が55%、国産牛肉は45%という数字になっており、国産牛が約半分を占めていますが、飼料自給率を反映すると牛肉の食料自給率は12%となり、牛肉生産の殆どを輸入品に頼っていることがわかります。

そんな状況下で昨今の急激な世界情勢の変化や円安の影響による作物の輸入価格の高騰は、日本へ大ダメージを与えています。

2022年、エサの輸入価格は前年度の1.5~2倍に跳ね上がり、酪農家さんへの経営への影響は計り知れません。酪農家への支援として、国の配合飼料価格安定制度や乳価の値上げ、県独自の支援制度の設定など、国や各自治体も対策を生じてきていますが、十分とは言えないと思います。

食料自給率が低い状況は、こういった外の変化をダイレクトに受けてしまうという危険性をはらんでいます。食料自給率の考え方や捉え方は様々ありますが、現状を踏まえると、日本の中で自給自足をするための体制づくりを整えることが急務であると考えてよいでしょう。

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循環型の酪農経営を目指す新たな取り組み

上記で触れた問題を解決するために、各農家さんや自治体は知恵を絞って、新たな取り組みを始めています。まずは、いかに自給自足を達成するかという点で、循環型酪農に目をつけて実践している農家さんが最近は多いみたいです。

循環型酪農

自然の資源を無駄にせず、再利用し循環させていく農業を循環型農業と言います。昨今のSDGs(持続可能な開発目標)にも繋がる方法ですね。

①牧場の牛の糞尿を処理して堆肥を生産
②堆肥は肥料として地域の畑や農地に還元
③その畑で育った作物や飼料を牧場の牛が食べて育つ

上記のサイクルを続けることで、経済的にも環境的にも優しい酪農に繋がります。

ちなみにノベルズグループでは、このサイクルの中にバイオガス発電の過程を組み込んで、電力発電と供給も行っています。糞尿の発酵ガスを利用してタービンを回し、発電するという仕組みで、大規模で大量の糞尿が出る牧場ならではの取り組みであるといえます。

エコフィード(ecofeed)

食品ロス解消と飼料供給の問題を合わせて改善するエコフィードと呼ばれる取組みにも注目が集まっています。

エコフィードとは、農林水産省によると、“環境にやさしい”(ecological)や“節約する”(economical)等を意味する“エコ”(eco)と“飼料”を意味する“フィード”(feed)を併せた造語です。

例えば、給食の残渣や、売れ残りの弁当、カットされたクズ野菜、食品の製造過程ででる副産物を、家畜の飼料として有効活用してしまおうという取組みです。

最近では、日本で供給過多になって余ってしまったお米を豚に食べさせ、「こめ豚」としてブランド化しているのを聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

食品ロスを減らすだけではなく、消費者にとっても「国内で生産された飼料を食べた家畜」という点が安全や安心につながっており、生産者と消費者のwin winを実現した取り組みになってます。

飼料用米は輸入トウモロコシとほとんど同じ栄養素を含んでいるので、代替品として非常に優秀です。日本の水田を守るためにも、この取組みは少しずつ広がってきています。

食品廃棄物が減るだけでなく、逆にそれを利用して新たな生産に回すことができるので、色んな産業が循環的に繋がりをみせて相乗効果をもたらしていますね。日本人の共通の心である「もったいない」精神が多くの問題を解決しているのです。

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創業以来、北海道・十勝を拠点に、持続可能な農業経営を追求しているノベルズグループでは、現在、酪農牧場、肉牛牧場(肥育牧場、育成牧場)で正社員を募集しています。北海道内で12牧場、山形県(酒田市、最上町)で3牧場を経営しており、各牧場では異業種&移住転職を果たした仲間が、数多く活躍しています。業界未経験の方、移住先での仕事の選択肢を検討中の方は、気軽にご相談ください。「ノベルズウェーブ」ではそんな皆さんに役立つ情報を提供するほか、「ノベルズグループ採用サイト」では、現在募集中の求人情報を紹介していますので、併せてご参照ください。

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