【肉牛の話①】肉牛生産の流れを徹底解説!これで肉牛牧場の知識もバッチリです。
これまでノベルスウェーヴでは、酪農牧場を中心に、乳牛のライフサイクルや飼養管理方法などについて紹介してきましたが、今回肉牛に焦点を当てた連載を企画しました。テーマはズバリ、『肉牛(牛肉)の生産から販売までを知ろう』。
これから4回に渡って、肉牛の生産と販売の流れとノベルズグループの取り組みについてノベルズ担当者へのインタビューを交えて紹介していきます!
第一回は、肥育牛が牧場でどのように飼育管理をされているかを徹底解説します。肉牛の生産ステージは大きく「繁殖」「育成」「肥育」に分かれていますが、今回は、最も飼養期間の長い肥育段階、肥育牛のお話が中心です。これを読めば、肥育牛の生産の流れはバッチリですよ。
そもそも肥育って何ですか?
肥育は、動物を飼育して肉や脂肪を増やすことを指します。肥育は畜産業において重要なプロセスであり、肉やその他の畜産物の供給を確保するために行われます。
肥育の主な目的は、動物の体重を増やし、肉の量と品質を向上させることです。これは、効率的な飼料利用と栄養バランスの最適化によって達成されます。一般的には、飼料として穀物、牧草や稲わらなどの飼料用作物などが使用されます。
肥育の過程では、飼料の種類と量、給餌スケジュールなどが管理されます。また、適切な飼育環境も重要です。十分なスペース、清潔な水、適切な通風が提供されることで、動物の快適性と健康が確保されます。
肥育は、ある一定の期間内で行われます。この期間は畜種や肥育の目的によって異なりますが、通常は数ヶ月から数年にわたります。牛の場合は9~10ヶ月齢の「素牛」と呼ばれる育成牛を20数ヶ月齢までの飼育し出荷するまでの期間を指すことが多いです。飼育される動物は、定期的に体重や成長の推移がモニタリングされ、必要に応じて飼料や管理の調整が行われます。
肥育の最終的な成果は、肉の生産です。肥育された動物は、市場で販売されたり、加工業者に供給されたりします。肉の品質は、動物の飼育管理や肥育方法によって大きく影響を受けます。肥育された動物から得られる肉は、美味しさ、栄養価、食肉産業の要求に応える能力などが評価されます。また、効率的かつ持続可能な畜産物の供給を実現するために重要です。適切な栄養管理、健康状態の監視、飼育環境の最適化などが肥育の成功に欠かせません。さらに、肥育は食品安全性と品質の確保にも関与しており、規制とガイドラインに従って行われます。
繁殖牧場や育成牧場を経て、素牛まで育てられます。
さて、それではざっくり肉牛の生産の流れについて説明していきましょう。今回は、黒毛和種去勢の一貫肥育について説明していきます。和牛の雄は枝肉市場でも一番高値で売れやすい牛の種類です。和牛は他の牛種では入りづらいサシが多く入るだけでなく、雄なので、身体が大きくなりやすく肉の量が取れやすいという特徴を持っています。
簡単に生産の流れを図でまとめてみました。
肥育と呼ばれる期間は一般的に9~10ヶ月齢の「素牛」から出荷までの期間の事を指しますが、それ以前の繁殖農家さんや育成農家さんで育てられた期間も肥育に大きな影響を及ぼしています。例えば、子牛の段階で風邪を引き起こしてしまうと、その後も慢性的な肺炎などの症状に侵され、増体量が伸び悩んだりするので、繁殖農家さんや育成農家さんの飼育管理も重要なポイントです。
一般的に和牛の繁殖農家さんによって、和牛子牛は生まれてきます。和牛の母牛に、和牛の精液を「人工授精」するか、和牛の受精卵を母牛の卵巣に着床させる「受精卵移植」で産ませることができます。畜産業界では、人工授精を英名の「Artificial Insemination」の頭文字を取って『AI』とよび、受精卵移植を「Embryo Transfer」の英名から『ET』と呼んでいます。
ちなみに、ノベルズグループでは、こちらの2つの手法のうち、『ET』の技術を得意としています。ホルスタインや交雑種(黒毛和種とホルスタインの掛け合いの牛)に対して、ETを行い、母牛とは別の種である黒毛和種の子牛を産ませています。業界の課題である黒毛和種の市場出荷頭数減少の課題を解決にも貢献しています。
生まれてきた子牛は約30kg。免疫力も無い赤ちゃんなので病気には気をつけないといけません。繁殖農家で生まれた子牛は育成牛舎と呼ばれる、子牛を専用で育てる牛舎(牧場)へ移動させます。そこでは子牛を個別で管理する「ハッチ」と呼ばれるステージ、ミルクを断って離乳させるステージ、大人の牛へ仲間入りするための準備期間のステージ等、おおよそ3つのステージを9~10ヶ月ほどかけて飼養されていきます。生後間もない頃は、成人男性が両腕で持ち上げられるくらいの大きさですが、最終的には約300kgまで成長していき、大人二人がかりでやっと抑え込めるくらい力も強くなっていきます。
育成牛舎での管理が終わった牛は「素牛」と呼ばれ、子牛市場で他の肥育農家さんと取引されていきます。肥育農家さんは、自分の牧場でこれから肥育する牛を選ぶわけですので、購入する牛は真剣に選んでいきます。骨格、体長、肢の長さが適切で発育が整っているか、無駄な脂肪がついていないか、血統が適当か、など様々な選定基準を使いながら、自分たちの牧場に合う牛をピックアップしていくのです。
肥育牧場での飼養管理について
育成牛舎(牧場)で飼育された素牛は、市場で売買されることで肥育農家さんの牧場へ飼育されます。ここからようやく「肥育」のステージとなります。ここから約20数ヶ月齢まで飼育され、体重は300kg前後から約700~1000kgまで肥やされていきます。このステージでは、牛に適切なタイミングで、適切な餌をたくさん食べさせ、筋肉と脂肪をつけてもらうことが大事です。そのために、肥育期間では主に「前期」「中期」「後期」の3つのステージに分け、月齢ごとで管理の仕方を変更しています。
「前期」の飼育管理は、導入後から12~14ヶ月齢の牛に対して行います。まず大きな胃を作ることを目的に、沢山の粗飼料(牧草などの飼料)を十分に与えていきます。牛が持つ4つの胃のうち、第一胃を「ルーメン」と呼びますが、牛の腹の左側ほとんどと、右側の後ろ半分を占める巨大な器官で、胃全体の8割を占めています。良質な粗飼料を与えることで、ルーメンそのものが大きく、丈夫なものへと成長していくだけでなく、消化分解を助けてくれる微生物が繁殖しやすい環境を作ることができます。この微生物を上手く活用することで、「中期」「後期」で濃厚飼料を与えた際も消化不良を起こさずに分解し、体に栄養として蓄えることが出来るようになるのです。
「中期」の飼育管理は、前期終了後から18~21ヶ月齢の牛に対して行います。目的は、筋肉増量とサシの素である脂肪を体内にためることです。私達が普段食べているお肉は筋肉の部分です。肉牛としての価値を高めるためには、第一に、この期間でタンパク質や脂質中心の濃厚飼料を十分に食べさせて、筋肉質な体つきにすることが欠かせません。また、サシを食い込ませるために、ビタミンAの摂取量を制限する方法(ビタミンAコントロール)も実施されています。この期間にビタミンAの血中含有量を下げることで、筋肉に脂肪が入り込んでいくのですが、一方で、ビタミンA自体は生命維持に不可欠な栄養素の一つですので、欠乏症に陥って、免疫力の低下や食欲不振などに陥らないような管理をすることが大事になってきます。新鮮な餌や水を確保することをはじめ、牛のストレスを溜めない牛舎環境を維持することは、枝肉での評価に大きく影響していきます。
「後期」の飼育管理は、中期終了後から24~26ヶ月齢の牛に対して行います。目的は、無駄なぜい肉を減らすことです。後期では牛の老化によって、皮下脂肪の老化萎縮が進みます。ここで中期に付けた脂肪の内、お肉として評価されない皮下脂肪を落としていくのです。皮下脂肪が落ちた牛は、見るからに筋肉隆々でボディビルダーのようです。生体を触っても、ブヨブヨした脂肪ではなく、反発が感じられる締まった体になっていきます。
出荷時は家畜車に積まれ、各と畜場へ運ばれた後、食肉市場で枝肉としてセリにかけられます。日本で一番規模が大きい食肉市場は、「東京都中央卸売市場食肉市場」で、1日に200頭前後もの牛(枝肉)が取引されていきます。ちなみに、ノベルズグループから出荷された一貫和牛は主に東京都中央卸売市場食肉市場や横浜食肉市場で取引されています。
いかがでしたか。 今回は肥育牛の生産の流れを解説していきました。肥育牛が一つの牧場で飼育され続けるのではなく、繁殖牧場、育成牧場など様々な牧場でも飼われていくことに驚いた方も多いのではないでしょうか。一頭の牛に多くの人の思いが乗せられ、牧場を越え大切に育てられているんですね。ちなみにノベルズグループでは「一気通貫型生産システム」を有しており、繁殖牧場、育成牧場、肥育牧場をすべて運営して、牛の誕生から出荷までを一元して管理しています。一貫体制のため、安定的な質と量の肉牛を生産することに長けているのが特徴です。私達もいち生産者として、消費者の皆様のニーズに答えられるような肉牛生産が出来るようこれからも頑張っていきます!
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いかがでしたか。今回は地方移住検討者や酪農就業検討者がよく疑問に思う問いに対して、答えていきました。もし、こちらのQ&Aコーナーが好評であれば、今後もシリーズ化して連載していこうと思います。
また、「地方移住」「酪農転職」「ノベルズグループ」に関して、ご質問や相談事があれば下記の質問箱にて受け付けております。ご質問は弊社のTwitterでお答えするか、もしくはこのようにノベルズウェーヴの記事として公開していきますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。