「枝肉」と「格付け」のお話 A5ランクのお肉はどうやって決まるの?
みなさんはA5ランクの肉と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか。おそらく、「高級そう」「サシが入って美味しい」などのコメントが出てくるのではないかと思います。でも、実際のところ『A5ランク』という評価は、何をもってそのように位置づけられているのか、皆さんはあまりよく知らないのではないでしょうか。実はそれを知るためには、食肉業界では欠かせない『枝肉』と『格付け』の理解が必要になってきます。今回はよく聞く言葉ではあるけど、中身までは意外と知らない『枝肉』と『格付け』について徹底解説していきます。
出荷の後、肉牛は“枝肉“と呼ばれる状態になります
肉牛は牧場から出荷された後、と畜場に運ばれていきます。そして、と畜された後は『枝肉』と呼ばれる状態になって全国の食肉市場でセリにかけられます。
『枝肉』とは何かというと、『牛一頭から頭、しっぽ、四肢、皮、内臓などを取り除き骨と肉のみになった状態』のことを指します。皆さんも一度は、映画やテレビで、冷凍工場などの施設でお肉が天井からぶら下がっているのを見たことある人もいると思います。その形が木の枝に似ていることが由来とも言われています。ちなみに日本で最大の食肉市場は東京にある、「東京都中央卸売市場食肉市場」であり、1日200頭以上もの牛が上場されていきます。ノベルズグループの和牛の肥育牛も、こちらの食肉市場に上場し、取引されています。
枝肉となった牛は、その後セリにかけられますが、その前に牛肉の品質をチェックする『格付け』と呼ばれる評価査定があります。皆さんもよく聞く“A5ランク”。そのランク付けは実はこの枝肉の状態で評価された牛肉の事を指しているんです。
格付けって一体どのように行っているんですか?
『格付け』とは日本食肉格付協会が定めている規格であり、「A~Cまでの歩留等級」と「1~5n肉質等級」に分けられて評価されます。
歩留まりとは簡単に言えば「可食部の割合」です。枝肉の重量が牛一頭の生体重に比べ何割かを調べ、その割合が多いほど食べられる部分が多いことを示唆しています。ちなみに“A”のランクは歩留基準値72以上なので、生体重の72%が可食部であることを指しています。
※日本食肉格付協会HPを参考に作成
一方、肉質等級はかなり多くの基準があります。『サシ(脂肪交雑)の量や質、肉色、締り、きめ細やかさ、脂肪の色沢や質』など様々な基準をもとに総合的に判断されていきます。一般的には5に近づくほどサシが入った牛肉で、1に近づくほど赤身が多い淡白な牛肉と捉えられているかと思います。あながち間違ってはいませんが、本来はかなり綿密な基準のもと肉質等級は評価されているということを理解していただけると嬉しいです。
また、A5ランクのお肉は市場取引価格も高く、どうしても「金額が高い=美味しい」と一般的に結びつけられがちですが、そんなにシンプルな話ではありません。実はA5ランクに価値があるのは、生体時の飼養管理の難易度が高いことに起因しているのと、日本の畜産業界が、赤身主体の輸入牛との差別化を図っているからです。そもそも格付けは目視による評価で、味の評価ではありませんし、美味しさの基準も人それぞれ。赤身のお肉が好きな方もいれば、サシが入ったお肉が好きな方もいるでしょう。
一方で、格付けの意義は、見た目で判断されるような肉の評価を定量的に評価されることです。セリにかけられたときに、公正な価格形成や円滑な食肉の取引につなげることが出来るので、食肉産業において格付けは欠かすことができない文化となっています。
食肉の格付けの歴史について
格付の歴史は、実はかなり古く昭和36年(1961年)まで遡ります。当時は農林水産省の承諾のもと、牛・豚枝肉取引価格が認定され、畜産農家が安定的に経営を持続できるよう、価格形成と円滑な取引を行うために誕生しました。その後昭和50年(1975年)に現在も枝肉の格付を行っている『日本食肉格付協会』が発足。役割はそのままに、全国各地の中央卸売市場、地方卸売市場、食肉センター等127箇所で枝肉の規格格付けを行っています。
日本食肉格付協会ちなみに、海外においては生産者と卸業者の間の取引は生体牛での取引が多く、また格付け制度の中身も大きく異なっています。全ての牛に制度を設けている国もあれば、任意で格付けを行う国もあるんですよ。日本で私たちがよく目にしている格付けのランクは国内独自の仕組みによって評価されている事を知っていたほうが良いかもしれません。
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最後の見出しで、食肉の格付けの歴史について解説しましたが、世界と日本では食肉の評価のされ方は千差万別だということも驚かれた方は多いのではないでしょうか。確かに、牛の種類や餌の質によって、出来上がる肉の質も全く異なるので、同じ格付け基準で各国の枝肉を評価することはかなり困難ですよね。別な言い方をすれば世界中の人々が自由に売買できるような大きなマーケットがまだ整備されていないということかもしれませんが、それは今後の食肉業界の課題と位置づけることが出来るかもしれません。
最近ではオージービーフ等の外国産牛肉もたくさん輸入され、日本での人気も高まってきました。一方で神戸ビーフも日本の和牛ブランドとして、海外で人気を博しています。どちらにしても、食肉産業でも国の垣根を越えて、輸出入を活発化する動きも出てきていますので、その流れに日本の畜産業がどのような対応をしていくのかとても楽しみですね。
私達も食肉の生産者としてたくさんの美味しい牛肉を消費者様に届けられるように頑張ります!
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