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酪農牧場で大活躍!元牧場スタッフの目線から大動物の獣医師の仕事を解説します!
牧場の仕事を知る
公開日:2023年4月10日

酪農牧場で大活躍!元牧場スタッフの目線から大動物の獣医師の仕事を解説します!

こんにちは。ノベルズウェーヴ編集部の吉永です。
突然ですが、皆さんは『獣医師』という言葉を聞いてどのようなイメージを持たれますか?私の予想ですが、おそらく多くの人が動物病院の獣医師さんをイメージするかと思います。ペットが病気や怪我をした時に治療や診療をしてくれる獣医師さんで、ペットの『命』を第一優先に救うお仕事です。

しかし、世の中の獣医師さんは動物病院だけで活躍しているわけではありません。ノベルズグループのような家畜を扱う牧場や家畜試験場にも獣医師さんが活躍するフィールドがあるんです。
同じように動物の命を救うという点では間違いはないですが、ちょっと動物病院とは違った点もあるようです。そこで、今回はそんな牧場で働く『大動物獣医師』にフォーカスを当てて、彼らの仕事内容について説明していきます。

目次

大動物と小動物の違いについて

早速、大動物の獣医師について説明していこうと思うのですが、その前に『大動物』という言葉についても解説しておきましょう。そもそも動物業界では、動物全体を『大動物』と『小動物』に分けて、言葉を使い分けています。ざっくりと説明するなら、

・大動物=産業動物、経済動物(家畜)
・小動物=愛玩動物(ペット)


という感じでしょうか。様々な文献や論文を読んでも、このように分けて考えられていることがほとんどだと思います。大動物の具体的な例は、牛、馬、豚、羊、ヤギなどです。その中でも、私達のような酪農家がお世話になっているのが、牛専門の獣医師さんです。一方、小動物の例は、犬、猫、鳥などのペットとして扱われる動物です。

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牧場での獣医師の役割

まずは、前提として大動物、小動物に関わらず、獣医師の存在意義は3つあります。「動物の保健衛生」「畜産業の発展」「公衆衛生の向上」です。ここからは、単純に動物の命を救うことを目的として獣医師は存在しているのではなく、人間の生活を豊かにするために存在しているということがわかります。例えば、家畜の健康を守って、食品の流通を遮らないようにしたり、人間に伝染る感染症などの管理を求められているのも獣医師なのです。故に、実は獣医師は「世のため、人のため」にお仕事に従事しています。この考えが根本にあれば、牧場での獣医師の仕事がより理解できるかと思います。

では実際、大動物獣医師の仕事内容はどのようなものなのでしょうか。今回はノベルズグループの牧場で活躍する獣医師さんをモデルに考えていますが、おおよそ以下のように分けることができると思います。

1⃣大動物の診察と治療
2⃣農家や牧場への利益向上のアドバイス


【1⃣大動物の診察と治療】
この役割は、小動物専門の獣医師さんと変わりませんね。この記事を読んでいる皆さんも一年に一回は風邪を引いて体調を崩したりすると思いますが、それは牛も同じです。私たち牛飼いとしては、牛が自らドラッグストアに行き、風邪薬を買って飲んでくれたら良いんですが、そんなことはできません。むしろ、糞尿が溜まった牛床で寝転ぶこともあるので、病気のリスクは間違いなく人間よりも高いでしょう。

そんな状況の中、体調を崩してしまった牛を診るのが獣医師の仕事です。牧場スタッフから、ここ数日の牛の様子や症状をヒアリングし、自分でも牛の身体を触診、検診して病状を把握。適切な抗生剤や、薬品を投与して治療を行っていきます。タブレッド錠剤を口径投与したり、注射器を使用して、筋肉注射や静脈注射を行ったり、病状によって治療行為は多岐にわたります。体力がなくなっている牛に対しては、人間と同じように点滴なども行ったりするんですよ。治療行為が終わったら牧場スタッフに一連の病状を説明し、経過観察を求めて終了です。この作業は皆さんが想像する獣医師のイメージとそこまで変わらないかと思います。

【2⃣ 農家や牧場へのコンサルタント】
この仕事がおそらく皆さんが想像する獣医師のイメージとギャップがあるのではないかと思います。実は大動物専門の獣医師さんは牧場の経営コンサルタントのような立場でもあるんです。要は、牧場の生産性向上のために、牧場の問題点を把握して、牧場運営におけるアドバイスを与えるんです。

酪農家は牛を単なるペットとしては飼養していません。もちろん生き物を扱う上で、大事なのは命の大切さを重んじることですが、酪農事業でお金を稼いでいる以上、絶対的に利益を追求する必要があります。赤字になれば、収入が入らず、生活ができませんし、そもそも牧場を運営する事もできません。酪農家も損をしてまでも、牛を飼い続ける訳にはいかないのです。

獣医師は酪農家が損をしている原因を突き止めて、その改善を促していきます。例えば、生乳生産量が前年度より落ちている牧場であれば、その原因として病気の発生率や牛床の汚さ、牛のストレスが掛かる環境かどうかなどを把握し、牛床に問題があると判断すれば、「牛床の交換を2週間に一回ではなく、1週間に一回に変更しましょう」とか「堆肥の質が悪いので、もう少し堆肥の発酵期間を長めに取りましょう」とか具体的な案を提示します。牧場主はその意見を聞いて、できる限り牛にとってよりよい環境を維持しつつ、自分たちも利益になるような管理体制の塩梅を探っていくのです。

そのような観点で言えば、利益にならない牛は、飼養コストがかかってしまうので、積極的に淘汰させたりします。また、薬品を牛に投与するときには、出荷何日前には薬品を使用できない法律があるので、治療をしたために出荷が遅れてしまい、牧場の損害にならないように気をつけながら判断を下しています。「利益」、「牛の命」、「治療にかける工数」など複雑な事情を総合的にまとめて、いい感じの解決方法を生み出すのが、大動物獣医師の役目なのです。

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大動物獣医師の大変なこと、やりがい

最後に大動物獣医師の大変さとやりがいについて説明していきます。私は現場スタッフ時代に獣医師の先生に沢山お世話になっていたんですが、その時に、なんともなしに聞いた獣医師の大変さとやりがいがとても感動したのを覚えています。実際に聞いた言葉をそのまま載せたいと思います。

まず、大変なことですが、『獣医師は動物だけを見ていても仕事にならないということ』だそうです。先ほどの仕事内容を読んでいればお分かりかと思いますが、結局どの仕事も、『世のため・人のため』にするものです。特に牧場のコンサル業務になれば、獣医師の一方的な理想を押し付けることはタブーであり、牧場の規模や従業員数、牛の頭数、市場価値など、様々な観点から、牧場主と一緒に解決方法を模索していくことが必要になっていきます。動物の知識や技術というのは、ただの道具であり、大事なのはその道具をどのように扱っていくのかということなのです。人間も刃物を上手に扱わないと怪我をしたり、させたりしてしまいますが、それと同じことです。

一方で、やりがいは『病気で苦しんでいた牛が治った時』だそうです。そもそもお話しを聞いた先生は、獣医師を志したきっかけが、動物が好きで、少しでも動物の命を救いたかったからだそうで、やはりその情熱は今でも根底にあるとお話しされていました。動物は基本的には人間とは違って意思疎通ができないので、少しの表情や歩様、仕草などを観察して、症状を汲み取っています。そこから推察して、自分が出した結論(=治療)が、ドンピシャリと当たり、症状が改善したときの達成感はなかなか素晴らしいものなのだそう。どの業界の医者であっても、このやりがいは彼らの仕事のモチベーションをあげる大きな要因になっているようですね。

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いかがでしたか?
今回は牧場で働く大動物獣医師の実態について説明していきました。家畜を扱うという点で、普段皆さんがよく見かける動物病院の獣医師さんとは診る観点が少し違ったのではないかと思います。現場時代、状況に合わせて柔軟に対応する獣医師の先生方は本当にカッコいいと思っていました。ノベルズグループでは月に一回獣医師の先生が牧場を巡回する機会があります。そこでは、先生からコンサルタントとしてのアドバイスや牛飼いとしての極意を沢山学ばせていただきました。もし、この記事を読んでいる方で、牛飼いに興味がある方がいれば、是非ノベルズグループの門を叩いて下さい。技術・飼養頭数共にトップレベルのギガファームで、一流の牛飼いを目指すにはもってこいのフィールドです。

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