ノベルズの持続可能な農業 その①「酪農家の新たな収益に和牛受精卵販売を」
長野県中野市に生まれ育ち、神奈川の大学を経て北海道十勝へ移住した外谷賢吾さん。新卒入社した酪農牧場で働くなかで強まったのが「持続可能な農業」の実現でした。そのための手法が、ホルスタイン牛に和牛の受精卵を移植し、産まれた和牛の子牛を市場で高値取引し、酪農家の新たな収益源とすること。「これなら永続的な酪農経営につながる」と確信した外谷は、社内で新会社設立を起草し、自ら代表に。新卒入社から4年目の出来事でした。
代表取締役(家畜受精卵移植師)
◆長野県中野市出身
東京農業大学で牛と出会い・学ぶ、北海道に移住して酪農牧場に務めました
長野県中野市で生まれ育ち、東京農業大学で牛と出会い、北海道十勝へ移り住んだ外谷さん。入社から4年で新会社の代表となった手腕はいかに。
持続可能な農業という大テーマにたどり着き、新会社設立。すごい経歴ですね
改めまして、株式会社ノベルズブリーディングサービスの代表をさせていただいております、外谷賢吾と申します。
わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又…ではなく、長野県の片田舎でございます。ごく普通の産婦人科で産湯を使い、姓は外谷(“とや”と読みます)、名は賢吾、フーテンなどどこ吹く風の、真面目だけが取り柄の人間です。ちなみに、男はつらいよシリーズは一度も見たことがありませんが、あの前口上がかっこいいのでやってみたかったんです。お許しください。
すいません。このWebメディアの離脱率が上がるのでそのへんでもういいですか
調子にのりました。それでは、改めまして。
わたくし外谷は、長野県の北部、うし屋さんよりもお米とリンゴが多いところで育ちました。神奈川県の東京農業大学で牛を学び、卒業後は肉牛と酪農の両方の牧場を経営するノベルズグループに入社。酪農牧場で丸4年、受精卵移植師として日々を過ごしてきました。
ちなみに、酪農とはホルスタイン種(ノベルズの場合)の牛を飼って、日々、お乳(生乳)を絞って出荷することで生活を営む職業です。生乳が出る理由は牛(雌)が妊娠するからです。つまりは、子牛が産まれなければ、お乳はでません。もうわかりますよね。酪農業は、雌牛が妊娠・出産してはじめて生産活動ができるのです。その雌牛に受精卵を移植させるのが私の仕事でした。
受精卵移植師になったからこそ持続可能な農業(酪農)を目指しました
酪農牧場で受精卵移植師として活躍する中、酪農経営の実態を知り、持続可能な農業を真剣に考えるようなった外谷さん。自らがいる酪農業界の永続的な繁栄のためにとった行動とは?
言われてみれば「確かに」と思っちゃいますね。つまりは、出産してはじめて生乳が絞れ、産まれた子牛を育成して成体としてまた妊娠させて生乳を搾るというサイクルが酪農というわけですね。
おっしゃるとおりです。酪農家さんが収入を増やすためには頭数を増やすことが考えられるのですが、土地やふん尿処理の問題も解決せねばならず、餌代や人件費などもあるので簡単には増やせません。また、生乳は皆さんが飲む牛乳だけではなく、「生クリーム」「バター」「チーズ」などの乳製品の原材料としての役割もあります。需要が増せば、生産拡大をすればよいのですが、莫大な設備投資が必要で時間もかかります。設備投資が完了する頃には需要減となっているというリスクも孕んでいます。
わかりやすいのが新型コロナの影響です。外食産業が落ち込み、学校の休校で給食需要も減りました。これではせっかく生産拡大をしても需要減で、生乳が余ってしまいます。ここで忘れてはいけないのが、酪農では、毎日、搾乳作業をしなければならず、搾らないと牛が病気になってしまって、最悪は生乳を廃棄する事態に陥ってしまうということです。
酪農業の生産量の増減は「乳牛の頭数」で調整しますが、簡単にはいきません。手塩にかけた牛(資産)を殺処分なんてできませんし、生乳廃棄は大きな生産ロスに繋がります。つまりは、酪農の生産調整は仕組みとしてコントロールするのが極めて難しいのです。
酪農経営は難しいのですね
そのとおりです。生き物である牛が相手の仕事ですし、前述したとおり、搾乳作業は休めませんから365日対応しないといけない業種なのです。労働条件の厳しさもあり、酪農家の子どもが跡を継がず、都府県では酪農家の離農も進んでいます。離農者が増えれば、生乳生産量が減少しますが、増産するには設備投資が必要です。
前述のとおり、投資をしても需要増減のリスクがあり、舵取りが難しいのです。過去、生産調整の失敗による「バター不足」といったことも実際にありました。猛暑で乳量が減るといったこともあり、生乳の安定供給を求められる酪農家を取り巻く環境は厳しいのです。
それで、持続可能な農業(酪農)というテーマに取り組もうと考えたわけですね。
御名答です。
和牛受精卵の販売・移植を行うことで、酪農家の新たな収益につながるのです
持続可能な酪農を目指すためにはどうしたらいいのか。答えは簡単でした。「生産頭数の増減ではない新たな収益源を生めばいい」。外谷さんが導き出した新たな収益源確保の手法は、ノベルズで働いていたからこそ浮かびます。
ズバリ!持続可能な酪農の実現のためにとった秘策を教えてください
ノベルズでは、交雑種の雌牛に和牛受精卵を移植して和牛子牛を産ませ、その後、出産した母牛を肥育する「交雑種1産取り肥育」を事業化したノウハウを持っていました。そして、私が入社して挑んできたのが、ホルスタインの「借り腹」で和牛を出産させるための移植です。2021年には、当社の和牛の素牛(=もとうし、子牛)の出荷頭数は月700頭となり、国内最大規模にまで成長しています。さらにはノベルズグループで肥育した和牛が東京や横浜などの市場で最高位を受賞したこともあり、グループで生産される受精卵から産まれた素牛の質について、高い評価を得ることが出来ました。
しかも、受精卵の卵子を提供するドナー牛はゲノミック評価により、肉質が良く、市場価値の高い牛の生産が期待できるものが使用できます。生産コストを下げ、求めやすい価格で受精卵の提供をできることがわかったのです。
一方で、政府は和牛生産量を2035年度までに2021年の倍となる30万トンに増やす目標を掲げています。「これだ!和牛の素牛生産が酪農家の生乳以外の新たな収益とすれば『持続可能な酪農』に繋がる」と確信したのです。
株式会社ノベルズブリーディングサービス誕生の基盤は整ったわけですね
はい。2021年3月、外部への和牛受精卵販売・移植を担うノベルズブリーディングサービスが誕生しました。とはいえ、酪農家は通常の飼料生産や搾乳で忙しく、また和牛の子牛は寒さに弱いなど手がかかる面もあるため、ホルスタインに受精卵移植で和牛を産ませる手法は道内ではまだ一般的ではないという事実もあります。
ただ、和牛需要は増えています。和牛繁殖農家が減る中、受精卵移植は和牛子牛の供給改善に役立つ上、酪農家の新たな収入源になり、「持続可能な酪農」の助けにもなるのです。
今後は、移植をした後のきめ細かいフォローも行います。受精卵活用が、酪農家にとって生乳以外の収益の柱になってほしいのです。移植した酪農家様の牧場で2022年に入り、和牛の子牛が誕生しはじめています。詳しくは、当社Webページでも紹介していきます。
持続可能な酪農の実現に向けて大きな一歩を踏み出しましたね。
ありがとうございます。新卒入社から4年という短期間で、私の問題意識を受け入れていただき、挑戦させてくれている会社には感謝しかありません。恩は実績で返すつもりです。何より、当社だけではなく、酪農界の未来のためにチャレンジできることが嬉しくて仕方がありません。“やりがい”しかないですよ。
今後の外谷さんから目が離せませんね。個人的には外谷さんの「移植師コラム」のファンです。和牛受精卵の移植や外谷さん自身についてご関心を持たれた方は以下Webページを御覧ください。
牧場で働くなら、ノベルズでチャレンジ!
創業以来、北海道・十勝を拠点に、持続可能な農業経営を追求しているノベルズグループでは、現在、酪農牧場、肉牛牧場(肥育牧場、育成牧場)で正社員を募集しています。北海道内で12牧場、山形県(酒田市、最上町)で3牧場を経営しており、各牧場では異業種&移住転職を果たした仲間が、数多く活躍しています。業界未経験の方、移住先での仕事の選択肢を検討中の方は、気軽にご相談ください。「ノベルズウェーブ」ではそんな皆さんに役立つ情報を提供するほか、「ノベルズグループ採用サイト」では、現在募集中の求人情報を紹介していますので、併せてご参照ください。
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